文部科学省が16日公表した福島第一原子力発電所周辺の放射線量測定結果によると、同原発から北西方向31キロにある浪江町の測定地点で積算線量が29.87ミリシーベルト(ミリシーベルトは1,000マイクロシーベルト)に達していることが分かった。この値は15日午前11時時点の数字で、同地点では毎日1時間当たり約16マイクロシーベルト(1日当たり約0.4ミリシーベルト)の放射線量が測定されていることから、同日中にも積算線量は30ミリシーベルトを超えたとみられる。
このほか、原発から北西ないし西北西方向29-33キロの距離にある飯舘村、浪江町の3地点でも積算線量がそれぞれ16.95ミリシーベルト、14.64ミリシーベルト、12.91ミリシーベルトと同程度の距離にある他の地点より突出して数値の高い個所がある。
積算線量が15日中に30ミリシーベルトを超えたとみられる浪江町の測定地点では、ポケット線量計を設置した3月23日から4月19日まで1時間当たり20-28マイクロシーベルトの放射線量が測定された。時間当たりの線量は少しずつ減りつつあるが、4月20日以降も1時間当たり16-19マイクロシーベルトで推移している。
政府の原子力災害対策本部は4月11日、福島第一原発から半径20キロ以遠の葛尾村、浪江町、飯舘村、川俣町の一部、南相馬市の一部を「計画的避難区域」に指定し、住民に避難を求めた。「計画的避難区域」設定の根拠として、年間の被ばく線量が20ミリシーベルトに達すると予測されるためとしており、さらにこの値が、国際放射線防護委員会(ICRP)と国際原子力機関(IAEA)の基準である年間20-100ミリシーベルトの下限値に準じたことを明らかにしている(2011年4月11日ニュース「『避難区域』拡大半径20キロ外に『計画的避難区域』」参照)。
また4月19日には、校庭や園庭の放射線量が1時間当たり3.8マイクロシーベルトを超えた福島県内の保育園、幼稚園、小中学校について、校庭・園庭での活動を1日あたり1時間程度に制限する暫定指標を決めた。この値は、1日16時間屋内(木造)で、8時間屋外ですごすことを想定すると、年間の被ばく線量が20ミリシーベルトを超えない値として設定された(2011年4月20日ニュース「1時間当たり3.8マイクロシーベルトで校・園庭での活動制限」参照)。
これに対し、年間20ミリシーベルトの線量は子どもに高すぎるとして、小佐古敏荘・東京大学教授が内閣参与を辞任するなど、安全な積算線量については専門家の間でも意見が割れている。