東京電力が計画している福島第一原子力発電所1号機の格納容器を水で満たす措置について原子力安全・保安院は5日、「やむを得ない妥当な措置」として東京電力に伝えた。東京電力は、余震に備えサプレッションチェンバーの支柱について耐震補強を検討することなどを求めた原子力安全・保安院の指示を順守し、作業を始めることを同日明らかにした。
格納容器を水で満たす措置は「水棺」とも呼ばれ、圧力容器内の燃料冷却が難航している現状の対策として計画された。東京電力は、原子力安全・保安院に提出した文書の中で1号機の現状を、原子炉内の燃料の一部が露出している可能性があり、原子炉を冷温状態にするための設備もすぐには復旧できない状態にあるとしている。圧力容器内の燃料全体が冠水する位置まで格納容器内に水を満たすことで、冷却に使える保有水が増え、万一、圧力容器内への注水が停止するような事態になっても燃料の温度上昇を遅らせることができると説明している。さらに燃料の露出部をなくすことで、格納容器外への放射性物質の漏えいを少なくすることも期待できるとした。
一方、これまで経験のない措置により、格納容器内の圧力が高まることや格納容器自体あるいは原子炉建屋の構造に与える悪影響などが懸念される。これらに対する東京電力の評価はいずれも危険はないとしているが、原子力安全・保安院は、サプレッションチェンバーの支柱を耐震補強するほか、格納容器内の水位と格納容器からの水の漏えいについて十分な監視を行い、注入する水量の抑制など対応策を適切に実施するとの条件をつけた。
1号機の格納容器は、圧力低下による外部からの空気(酸素)の流入で水素爆発が起きる可能性もあることから、窒素の補充作業も行われている。格納容器内への水の注入作業は圧力変化をにらみながらの慎重な作業になるとみられる。