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小佐古内閣参与が政府の放射線防護策批判、辞任

2011.04.30

 福島第一原子力発電所の事故対策のため内閣参与に就任していた小佐古敏荘・東京大学教授(放射線安全学)が29日、政府の対応を批判、菅首相に内閣参与を辞任することを伝えた。

 同日、記者会見した小佐古氏は、政府が法律や指針、マニュアルを軽視してその場限りの対応で事態収束を遅らせている、と語った。具体的には、「住民の放射線被ばく線量(既に被ばくしたもの、これから被ばくすると予測されるもの)は、緊急時迅速放射能予測ネットワークシステム(SPEEDI)によりなされるべきものであるのに、法令などに定められている手順どおりに運用されていない」と原子力安全委員会の対応を批判している。

 SPEEDIについて原子力安全委員会は、放射性物質放出源のデータが得られなかったことを、事故発生の12日後までSPEEDIを活用できなかった理由に挙げていた。しかし小佐古氏は、法令、指針などには放射能放出値が得られない場合についての手順が定められているのにやらなかった、と原子力安全委員会の説明を否定している。

 また、放射線量が1時間当たり3.8マイクロシーベルト(1マイクロは千分の1ミリ)を超えた福島県内の保育園、幼稚園、小中学校について、屋外活動を制限しただけで通常の授業は行ってよいとした政府の措置についても強く抗議した。「通常の放射線防護基準に近いもの(年間1ミリシーベルト、特殊な例でも年間5ミリシーベルト)で運用すべきだ」と、年間20ミリシーベルトの数値を引き下げるよう主張している。

 小佐古氏は、福島第一原発から20-30キロ範囲の住民に屋内退避指示が出た翌3月16日に、菅首相から要請されて内閣参与に就任した(2011年3月16日ニュース「放射線安全の専門家、小佐古敏荘・東大教授内閣参与に」参照)。氏によると、主として環境、放射線、住民にかかわる放射線防護を中心に、原子力災害対策本部、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、文部科学省などの活動を逐次レビューし、足りない部分、不適当な部分について首相官邸と原子力災害対策本部に情報を提供し、助言を行ってきた、という。

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