デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者から採った人工多能性幹細胞(iPS細胞)で、このiPS細胞に欠けている病気の原因遺伝子を修復することに鳥取大学の研究チームが成功した。
鳥取大学大学院医学研究科の押村光雄・教授と香月康宏・助教らの研究手法は、ヒト人工染色体(HAC)ベクターを、遺伝子の運び屋として用いているのが特徴。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ヒトX染色体上にあるジストロフィン遺伝子の機能欠損によって起こる。この遺伝子は大きいため従来用いられているベクターではうまく遺伝子を導入し、遺伝子全体を正常に修復することができなかった。
iPS細胞は、患者自身から採った細胞からつくることができるため、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのような病気に対する遺伝子治療への応用が期待されている。今回の成果は、iPS細胞を初めてつくり出した山中伸哉・京都大学教授との共同研究で得られたもので、HACベクターとiPS細胞の組み合わせによる遺伝子治療の実現に向けた一歩と期待されている。