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幹細胞研究に弾みiPS細胞国際会議

2008.05.13

 山中伸弥 氏・京都大学教授が開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究の推進を目的とする国際シンポジウム「iPS研究が切り拓く未来」(科学技術振興機構主催)が11、12の両日、京都で開かれた。

 iPS細胞の意義をいち早く理解し、この分野で山中教授とともに世界の最先端を走るイェーニッシュ・米マサチューセッツ工科大学ホワイトヘッド研究所教授ら世界各国の著名な研究者たちが参加し、それぞれ最先端の研究成果と各国の取り組みなどについて報告した。

 2日間の報告、パネルディスカッションは、山中教授の研究成果がきわめて独創的であるのと同時に、多くの研究者によるこれまでの多能性幹細胞研究成果の基盤の上に立った研究だったことをあらためて参加者たちに印象づけた。イェーニッシュ教授、ワイスマン・米スタンフォード再生医療研究所所長(山中教授とともに2008年ロベルト・コッホ賞受賞)などから、iPS細胞に対する大きな評価と期待が表明される一方、両氏を含め、今後、医療への応用を目指すには、これまで多くの研究成果がある胚性幹細胞(ES細胞)とiPS細胞とのさまざまな比較研究の重要性を指摘する声が相次いだ。

 2008年のノーベル医学・生理学賞受賞者であるエバンス・英カーディフ大学生物科学部長は、「ヒトES細胞があったからiPS細胞も樹立できた。iPS細胞はヒトES細胞を得る方法を革命的に変えた意義がある。再生医療の未来は明るいと思う。ただわれわれがやっていることは基礎的な研究だ。応用という最終的なプロセスに行くまでには細胞生物学など基礎的な理解をもっと深めることが大事だ」と、医学的な応用までには幅広い研究が必要であることを強調した。

 会議で明らかになったことの一つは、ES細胞、iPS細胞を取り巻く環境の違い。「ユダヤ教では生命の始まりは着床の時点から」という理由でES細胞についての規制がないイスラエルの実情が、イツコビッシ・イスラエル工科大学幹細胞研究センター教授から紹介された。一方、シェラー・ドイツ・マックスプランク分子医薬研究所所長(山中教授、ワイスマン所長とともに2008年ロベルト・コッホ賞受賞)は、「胚保存法によって、余剰胚自体がつくれない。ES細胞の輸入にも規制がある」というドイツの厳しい研究環境が報告された。ワイスマン所長は「政治、宗教によって科学の進歩が抑えられるのはおかしい」と連邦政府のヒトES細胞研究支援規制政策をとり続けている米ブッシュ政権の対応を批判した。

 最後のパネルディスカッションでは、これら各国の研究環境の違いとこれからのiPS研究の取り組み、国際協力の重要性など意見交換が行われ、2日間の会議を終えた。

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