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iPS細胞の治療効果マウスで確認

2007.12.07

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作り出した造血幹細胞をマウスに移植することで、鎌状赤血球貧血の症状を好転させることに米ホワイトヘッド研究所の研究チームが成功、米科学誌「サイエンス」最新号に報告した。

 動物でiPS細胞の治療効果が確かめられたのは初めて。

 iPS細胞は、山中伸弥・京都大学再生医科学研究所教授が昨年8月、世界で初めてマウスの細胞で作り出すことに成功した。ヒトの皮膚細胞から、iPS細胞を作り出すことに初めて成功した、と山中教授が米科学誌「Cell」に報告したのもわずか半月ほど前。再生医学の切り札になるのでは、という期待から、世界各国の研究グループがiPS細胞の研究分野に参入しているが、今回の報告は、あらためてこの分野の競争激化を裏付けたといえそうだ。

 ホワイトヘッド研究所の研究チームは、鎌状赤血球貧血症状を持つマウスの尾から採取した皮膚細胞を用い、iPS細胞を作成した。次に鎌状赤血球貧血症に関与する遺伝子を、正常な遺伝子と入れ替えた。iPS細胞が造血幹細胞に発達し、さまざまな血球や免疫細胞を産生するようになった時点で、マウスに移植したところ、その細胞は健康な血球を産生し始めた。その後、このマウスの症状は大いに好転したという。

 iPS細胞の治療効果をヒトで確かめる前には、発がん性がないことを確認するなど多くの研究が必要なことを山中教授自身が指摘しているが、研究チームも、ヒトの治療に利用するためにはまだ解決する必要のある重大な問題が残っていると言っている。

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