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マイクロRNAが神経回路や視細胞の形成に関与

2011.08.31

 これまで働きが不明だった脳内の「マイクロRNA」が、記憶に関わる海馬の神経回路や目の網膜の神経細胞の形成に関係していることを、大阪バイオサイエンス研究所の古川貴久・発生生物学部門研究部長と佐貫理佳子研究員らが明らかにした。

 マイクロRNAは18-25個の核酸でできている小さなRNAで、ウイルスやヒトまでのさまざまな生物に存在し、これまで153生物種から2万種類近くが登録されている。マイクロRNA は、DNAの遺伝情報がメッセンジャーRNA(mRNA)に転写されてアミノ酸が生成される一連の機能のうち、mRNAに対して作用することが分かってきた。

 古川部長らは、マイクロRNAのうちでも脳の中枢神経系に多く存在する「miR-124a」という種類に着目した。生まれつきmiR-124aのないマウスを世界で初めて作ったところ、脳全体が小さく、脳の発達障害も起こしていた。さらに、記憶に重要な海馬の神経回路に形成異常が見つかり、網膜で「視力と色覚」を司るはずの神経細胞(錐体視細胞)が細胞死によって脱落していた。

 こうした異常は、脳の成長とともに働かなくなるはずの遺伝子(Lhx2)が、miR-124aがないために過剰に働き続け、引き起こされたとみられる。マイクロRNAの働きを、生体レベルで初めて証明したもので、てんかんや自閉症などの精神疾患の原因究明につながると期待される。この研究は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の一環として行われた。

図. miR-124a欠損による海馬の神経回路異常
上図: 海馬の歯状回の顆粒細胞(赤)に入った情報は苔状線維を介してCA3の錐体細胞(青)へと伝達され、さらにCA1へと伝わる
下図: miR-124a欠損マウス(KO)では、苔状線維とCA3錐体細胞の回路形成が正しい位置で形成されず、苔状線維のCA3領域への異常侵入が認められた
(提供:大阪バイオサイエンス研究所 古川 貴久 氏)

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