歩いているサルの脳から取り出した情報をロボットに送り、リアルタイムでサルの歩行を再現させる実験に日米の国際チームが成功した。科学技術振興機構の研究プロジェクトによる実験で、国際電気通信基礎技術研究所の川人光男ATR脳情報研究所長ら日本側の研究グループと米デューク大学の研究グループをネットで結んで行われた。
実験に使われたヒト型ロボットは、米国カーネギーメロン大学と川人所長らが共同で開発した。生物の歩行を参考にした制御手法を用いて開発された中枢パターン生成器が組み込まれている。米デューク大学でウォーキングマシーン上を歩かせたサルの運動野から数百の神経細胞の活動を読み出し、ロボットの脚の関節位置情報に実時間で変換できる手法が用いられた。データはデューク大学からインターネットを介して、京都府相楽郡の国際電気通信基礎技術研究所に置かれたロボットに伝送され、ロボットを実際に歩かせることに成功した。
川人所長らの研究は、ヒトの行動の情報処理モデルを作り、ロボットによって検証することで脳をよりよく理解するのが目的。その応用として、ヒトに近い動きのできるロボットの開発も目指している。今回の成果は、下半身の不自由な人たちの運動機能を助ける方法の実現などに向けて大きな一歩になる、と研究チームは言っている。