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超巨大地震で誘発される地殻活動も要注意

2011.04.18

 17日つくば市の防災科学技術研究所で緊急報告会「東日本大震災への対応」が開かれた。岡田義光・同研究所理事長自ら地震の概要と地球科学的な影響について報告し、超巨大地震が起きた後、周辺で誘発現象が起きる可能性についていくつか例を挙げて注意喚起していたことが目を引いた。

 日本海溝沿いで今回のような連動型超巨大地震の発生を真剣に心配していた地震学者、地質学者はほんの少数だったと考えられる(2011年4月6日本蔵 義守氏・東京工業大学 名誉教授「緊急寄稿『東北地方太平洋沖地震の発生はなぜ想定外だったのか』」、2011年3月20日宍倉 正展氏・産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター海溝型地震履歴研究チーム長「緊急寄稿『地層が訴えていた巨大津波の切迫性』」参照)。

 岡田氏によると政府の地震調査研究推進本部も今回のような連動型超巨大地震の発生は予測していなかった。氏が報告の中で紹介した地震調査研究推進本部の「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価(2009年3月9日)」 によると、太平洋プレートが沈み込む日本海溝で次に最も起きる可能性が高いとされていたのは宮城県の東方にあたる三陸沖南部で、地震の規模はマグニチュード(M)7.7。今後10年以内に発生する確率は30-40%、30年以内なら80-90%とされていた。起こる確率は見当違いとは言えないが、地震の規模はまるで違った。

 福島県沖の日本海溝沈み込み域となると、地震の規模はM7.4前後で、起きる確率は今後30年以内に7%となっていた。茨城県沖の日本海溝沈み込み域は地震が過去頻繁に起きており、30年以内に発生する確率は90%と非常に高く見積もっている。しかし、地震の規模は福島県沖よりさらに小さくM6.7-7.2。福島県、茨城県に住む人々が大きな津波を伴う今回のような巨大地震はまず起きないと思い込んでも責められないような予測だったといってよい。

 では、今後気をつけることは何か。岡田氏は、今回、長さ500キロ、幅200キロもの震源域(断層がずれた範囲)内で現在頻繁に起きている余震とは別に、周辺で巨大地震や噴火を誘発する可能性に注意を呼び掛けている。インドネシア・スマトラ沖で2004年にM9.1の海溝型超巨大地震が起きた約3カ月後に、同じ海溝のすぐ南でM8.5の巨大地震が起きた例のほか、トルコを東西に走る北アナトリア断層で1939-92年にかけて多くの地震が起きている例などを示した。

 日本国内で次に誰もが心配するのは南海トラフ、駿河トラフでの海溝型巨大地震だ。ここでは1854年に駿河湾から遠州灘、紀伊半島南東沖にかけて駿河トラフ−南海トラフのプレート沈み込み域が一度にずれる巨大地震(M8.4)が起き、その32時間後、残る西側の南海トラフで同規模の巨大地震が起きた。二つの地震を合わせて安政地震と呼ばれている。南海トラフのプレート沈み込み域は日本海溝より、巨大地震の起き方に規則性がみられ、安政地震の147年前には宝永地震(M8.4)、さらにその102年前に慶長地震(M7.9)が起きている。安政地震と同様、駿河湾から四国沖にかけてのプレート沈み込み域が一挙にずれる巨大地震だった。

 さらに安政地震の90年後、1944年には東南海地震(M7.9)が起き、そのわずか2年後にすぐ西側で南海地震(M8.0)が起きている。この時、なぜか駿河湾から東海沖にかけてだけは何事も起こらなかったため、この沈み込み域には相当のひずみがたまっているとみられている。次に起きるのがひずみが積み残されたこの東海地震なのか、東海だけでなく東南海、南海地震が一度あるいは短い間隔で連続して起きる過去の安政地震、宝永地震、慶長地震といった連動型巨大地震の再来かが、地震学者、防災関係者たちの大きな関心事だ。

 岡田氏は1707年の宝永地震が起きた49日後に富士山が噴火したことも挙げ、巨大地震によって誘発される現象は地震だけでなく噴火も含まれることを指摘した。「今回の超巨大地震が起きた後に周辺でどのような現象が発生するかは予断を許さず、注意深く活動を見守っていくことが必要だ」と同氏は強調していた。

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