世界保健機関(WHO)の当局者は日本時間14日未明、「新型コロナウイルスが消え去ることはないかもしれない」などと述べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はエイズが根絶できないのと同様に根絶できない可能性があるとの見解を示した。その一方で治療薬やワクチンの開発により対応は可能と強調し、世界各国に長期的対策と国際協力を呼び掛けた。
WHOで緊急事態対応を統括し、COVID-19の事実上の責任者であるマイケル・ライアン氏は記者会見で「COVID-19は新たな風土病になるかもしれない。新型コロナウイルスは根強く存在して消え去ることはないかもしれない」と述べた。
さらに、当初は「死に至る病」と人々を恐怖に陥れ、現在もウイルスは根絶できないながらも、1990年代後半に画期的な治療法が見つかったエイズを引き合いに「治療法や予防法が確立されたためにエイズ患者は健康に長生きできるようになり、以前ほど恐れられなくなった。エイズウイルス(HIV)も消滅していないが折り合いをつけている」などと指摘。COVID-19についても今後は、長期的対策を立てながら各国が協力してワクチンや治療薬の開発に向けて取り組むことの重要性を強調した。
この日の記者会見は1時間以上にわたりオンラインで行われた。記者の質問はCOVID-19の終息見通しのほか、感染国で経済活動再開の動きが出ていることに集中した。ライアン氏は「感染拡大が一度落ち着いても、再び拡大が始まると重大な対応を迫られることは既にいくつかの国の実例がある」「(新型コロナとの対応は)長い間にわたって問題になる」「新たな感染者を監視する能力を持たずに行動制限を緩めると再びロックダウン(都市封鎖)の措置を取らざるを得なくなり、公衆衛生と経済が共倒れになる」などと述べ、経済活動を再開する場合でも感染者の増減を正確に把握する検査体制の充実が不可欠だ、と強く訴えた。
ライアン氏はこのほか、感染国で経済活動がある程度再開されることを前提に、各国間の人の移動が感染再拡大の大きなリスクで、陸路や空路での移動に関する具体的な対策指針が必要との考えも示している。
米ジョンズ・ホプキンズ大学の14日午前段階の集計によると、世界の感染者数は約434万人、死者は30万人に迫っている。最近ではロシアの感染者増が目立ち、現在約24万人で世界一感染者が多い米国の約139万人に次いでいる。
関連リンク
- WHO・COVID-19サイト
- 米ジョンズ・ホプキンズ大学の「COVID-19 Interactive Map」