多くの人が注視する会見だった。理化学研究所(理研)発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子(おぼかた はるこ)研究ユニットリーダー(30)は4月9日、大阪市内で会見し、新しい万能細胞とされた刺激惹起性多能性獲得(STAP)細胞の論文について、「悪意をもってこの論文を仕上げたわけではない」と、改ざんやねつ造の不正を否定した。「不注意、不勉強、未熟さゆえに、多くの疑念が生じた」ことを何度もわびながら、理研に再調査を求めた不服申し立ての理由を説明した。
1月28日に神戸市の同研究センターで会見して論文を発表して以来、約70日ぶりに公の場に登場した。声を詰まらせての長い会見になった。「STAP現象が論文の体裁上の間違いで否定されるのではなく、科学的な実証、反証を経て、研究が進むことを何よりも望む。STAP現象は200回以上確認している」と研究の進展に強い使命感を示した。1月30日付の英科学誌ネイチャーに筆頭著者として発表した論文は撤回しないことも表明した。
会見には、代理人の三木秀夫弁護士、室谷和彦弁護士が同席した。室谷弁護士は、電気泳動データの切り貼りについて、実際にあったデータの一部挿入で、「改ざんに当たらない」と主張した。また、STAP細胞の多能性については、取り違いであり、「ねつ造ではない」と語った。小保方氏がこの間違いに自ら気づき、訂正した論文をネイチャーに提出していることも報告して、「ねつ造という調査結果は不十分」と結論づけた。
質疑応答で小保方氏は間違った理由を聞かれ、「申し訳ございませんとしか言いようがない。後悔と反省をしている」と弁明した。また「私自身は200回以上、STAP作製に成功している。ネイチャー論文にはSTAP現象を記述した。作製の最適条件を探る研究を準備しているところだった。研究が止まったのが残念」と話した。真偽を決着するための公開実験の提案については「すべて証明するのに日数はかかるが、見たい人がいれば、どこにでも行く。研究を前に進めていただける方がいれば、協力していきたい」と意欲を見せた。
実験ノートは「3年間で2冊しかなかった」と理研調査委員会は指摘したが、「少なくとも4、5冊ある。これまで自己流で走ってきて、不勉強、未熟さを情けなく思っている」と悔いた。論文の撤回については「それは結論が完全な間違いと発表することになる。私は結論が正しいと思っている」と強調した。さらに「もし私に、マイナス100から科学や研究に向き合っていくチャンスがあるなら、STAP細胞が人の役に立つ技術になるよう、研究を進めていきたい」と語った。会見は2時間半に及んだ。