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STAP論文の撤回を共著者が提案

2014.03.11

◇追記
 刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得細胞(STAP細胞)を発見したとする成果につき、理化学研究所の調査委員会が2014年3月と12月、研究不正があったと認定しています。論文は同年7月に取り下げられました。

 画像の使い回しやほかの論文からの無断転載などの問題が指摘されている新しい万能細胞「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得(STAP)細胞」の論文について、共著者の若山照彦(わかやま てるひこ)山梨大学生命環境学部教授は3月10日、「信用できなくなった」として論文の撤回を理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子(おぼかた はるこ)研究ユニットリーダーら他の共著者7人にメールで提案した。山梨大学で取材に応じて明らかにした。また大学のホームページで「STAP細胞について科学的真実を知りたい」と表明し、小保方さんから渡されているマウスのSTAP細胞を「公的第三者機関に提供し、詳細な生化学的分析を依頼することを決断した。分析結果は速やかに公表する」と約束した。

 若山教授は1月30日の英科学誌ネイチャーにSTAP論文が掲載された時、小保方さんらと並んで会見し、成果を強調していた。論文は新聞の一面でそろって報道され、世界的な関心を集めた。しかし、その後「不自然な点が多い」と指摘された。内外の研究グループが試みても、STAP細胞づくりを再現できないため、小保方さんら3人は3月5日、STAP細胞作製の手技を公表し、「科学研究における再現性を含む評価は、科学的根拠を基に研究者社会において検証いただくもの」と訴えていた。若山教授は「私が担当した部分は、共著者より提供された細胞からのキメラマウスの作製、幹細胞の樹立で、それらについては自信を持って適正に実験がなされたと言い切れる」としている。

 共著者が研究グループ内の議論を飛び越して、論文の撤回を要求するのは極めて異例だが、それだけ、STAP論文をめぐる問題が深刻になっていることをうかがわせる。ベテランの共著者にも責任はある。STAP細胞が確かなら、若山教授が言うように、出直すのも選択肢となるだろう。理化学研究所の調査は簡単なはずである。調査結果の速やかな公表が迫られている。ずっと沈黙を続けている若い小保方さんらの対応も注目される。

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