農林水産省の森林・林業基本政策検討委員会(座長・岡田秀二・岩手大学農学部教授)が11月30日、森林・林業再生の道筋を示した報告書「森林・林業の再生に向けた改革の姿」をまとめ、鹿野道彦・農林水産相に提出した。国が決めていた森林区分を廃止し、地域の実情に合わせ市町村が柔軟に設定できるようにするなど地域の力活用を強く打ち出している。
報告書は、「木材の自給率50%以上」、「すべての民有林で施行集約化が進み、持続的な森林経営と計画的な施行が定着」など10年後に実現を目指す目標をかかげ、実行プランの工程表を示した。
目指す森林の姿として現在、国は「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」という3つの区分を決めている。報告書は、これを分かりにくく、利用もされていないとして廃止し、新たに「水源かん養」、「山地災害防止・土壌保全」、「快適環境」、「保健・レクリエーション」、「文化、物質生産」、「希少野生動植物の生息・生育地保全」など森林の重要な機能をより具体的に示している。
それぞれの機能ごとの望ましい森林の姿と必要な施業方法を国、都道府県が例示し、それを参考に市町村が地域の意見を取り入れて森林を区分できるようにすることを提言している。
効率的な森林作業と森林の多面的機能を持続的に発揮させることを狙い、現行の森林施業計画制度に代わる「森林経営計画(仮称)」制度の創設も提言している。計画は、一定規模以上の森林所有者や、森林所有者に代わって森林経営を行う「特定受託者(仮称)」が独自に計画を作成することも認める、としている。
また、10月1日に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に基づき、低層の公共建築物について原則としてすべて木造化を図り、高層・低層にかかわらず内装などの木質化を推進するなど、国が率先して公共建築物における木材利用を推進することも提言した。地球温暖化対策としても関心が高まっている木質バイオマスについても、石炭火力発電所における混合利用や、チップ・ペレット・たきぎなどによる熱利用を推進するなど利用促進を求めている。
森林・林業の再生は6月に閣議決定された「新成長戦略」で、「21世紀日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」の一つに位置付けられている。報告書によると国内の森林資源は戦後、積極的に推進された造林事業の効果もあり、毎年、体積にして8千万立方メートルも増え続けている。他方、集約化や機械化の立ち後れなどによる林業採算性の低下などから森林所有者の林業離れが進み、資源が十分に活用されないばかりか、多面的機能が損なわれ荒廃さえ危惧される状況になっている。