破綻しつつある日本の林業立て直しの期待がかけられている針葉樹・広葉樹の混合林育成と、木材としての価値が高い針葉樹の長期伐採化を目指す技術開発を今年度の重点課題とすることを、林野庁が明らかにした。
重点課題に選ばれたのは、人工の針葉樹林に侵入した広葉樹の生育状況を調べ、針葉・広葉樹の混交林化をむしろ積極的に進めるための技術開発を目指す取り組みで、近畿中国森林管理局森林技術センターが中心機関となる。また、低コストで木材を安定的に供給できる持続可能で多様な森林造成技術の開発という重点課題については、九州森林管理局森林技術センターが中心機関となる。
日本では、太平洋戦争後の増大する木材需要に対応するため、1955年ごろから広葉樹林をスギやヒノキといった針葉樹の人工林に転換することが推進された。ところが輸入材の増加により、1998年を境に国産スギ材が米国からのツガ材より価格が下回るといった事態が生じている。加えて1955年ごろから1960年代に一斉に植林された木が伐採期にかかったことから、国産材の価格はさらに低下傾向が続いている。林業経営の難しさから、植林をあきらめ伐採した後、放棄林になったところも増えている。
林業を再生するため、最近、水源かん養機能あるいは生物多様性の保全、地球温暖化対策といった地球規模の課題に貢献する新たな森林の価値に重きを置き、針葉樹と広葉樹が混在する複層林の育成を進める動きも出て来た。
また、スギやヒノキといった価値の高い針葉樹は、より長く育成した後、伐採した方が、コストと森林保全の両面から有利だとする考え方に基づく「長伐期化」が、これからの林業にとって重要な課題とされている。