食料になるトウモロコシなどを原料としないバイオエタノール生産技術の実証を目指すプロジェクトを、産業技術総合研究所がスタートさせた。
木質系、草本系とも呼ばれるセルロース系バイオマスを原料にエタノールを生産する方法は、農業と競合せず、農作物価格のの高騰など特に途上国への打撃も少ないという利点がある。他方、技術的には多くの課題も残されている。
産総研の取り組みは、まず厄介な前処理法として、これまで同研究所で研究開発してきた水熱処理方式と湿式メカノケミカル処理を組み合わせた方式を採用するのが特徴。現在、開発が先行している硫酸を使用する処理法に比べ、環境への悪影響も少なく安いコストで、糖化—発酵というエタノール生産に必要な工程を可能にすると期待されている。
産総研は、まずセルロース系バイオマス原料200kg/バッチの処理能力(60リットルのエタノール)のミニプラントを建設し、その運転実績から実用化プラントへの展開を見据えた試験プラント2号機の設計、建設という3年半の開発スケジュールを立てている。
温暖化対策として石油に代わるバイオエタノールに世界的な関心が集まっているが、はやくもブラジルや米国で、サトウキビやトウモロコシなどを用いたエタノール製造が急増し食料や家畜用飼料の価格を押し上げるという大きな社会問題を引き起こしている。期待が高まっているセルロース系バイオマスによるエタノール生産に対しては、稲わらのように季節に集中して発生する材料も原料にすることから、多種多様なセルロース系バイオマスを原料とする生産技術の開発が急がれている。