スカンポの名でも知られる多年草植物イタドリなどを燃料に加工、ビニールハウスの暖房に利用する実証実験を近畿大学の研究チームが北海道下川町で行い、二酸化炭素(CO2)削減に効果があることを確かめた。
井田民男・近畿大学理工学部准教授らは、飲料工場から大量に排出、廃棄される茶かすをはじめ、ほぼすべての植物由来バイオマスから、石炭コークスの代わりとなる固形燃料「バイオコークス」をつくる技術を開発している。北海道下川町に自生するイタドリなどの植物をバイオコークスに加工、地元農家の協力を得て、昨年末から今年春にかけて4カ月間、トマト栽培の暖房用燃料に使用する実証実験を行った。
消費したバイオコークスは約10トンで、灯油、重油を使用した場合に比べると、CO2排出を約6トン削減できたことになるという。
近畿大学は、2008年4月、北海道恵庭市に「近畿大学バイオコークス量産実証実験センター」を開設し、実証実験に使うバイオコークスの製造を開始した。同年4-7月、豊田自動織機の東知多工場で、自動車エンジン部品を製造するキュポラ炉で実証実験を行い、バイオコークスが石炭コークスの11.4%を代替できることを確認している。さらにことし4月には、ナニワ炉機研究所と共同で、1日あたり約1トンの製造能力を持つ商用タイプ製造装置を開発した。
今回の実証実験ではイタドリという地元に自生する草本バイオマスだけでなく、木くずやジュースのしぼりかす、もみガラなどから製造したバイオコークスも用い、いずれもハウス栽培の暖房用燃料として使用可能であることを実証した。
井田准教授は、「バイオコークスによる低炭素農業・CO2循環型農業が今後、拡大していく可能性を示した」と話している。
北海道下川町はバイオマスタウン構想を掲げ、道内の環境モデル都市となっている。循環型森林経営を長年実践し、03年に北海道初のFSC(森林管理協議会=本部ドイツ)森林認証を取得した。さらに同年、道内39市町村が参加して発足した「森林吸収源を活用した地域経営に関する政策研究会」の事務局も務めている。