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X線自由電子レーザー実現に前進 大型集光鏡開発

2008.08.08

 日米欧で開発競争が進むX線自由電子レーザー実現に大きな一歩となる大型集光鏡の開発に、大阪大学と理化学研究所の研究チームが成功した。

 この集光鏡はX線自由電子レーザーの強度を一挙に1億倍にすることが可能。理化学研究所の大型放射光施設「Spring-8」のX線を用いた試験で、理論通りX線がナノサイズの面積に集まることが確認された。

 可視光、紫外線よりさらに波長の短いX線領域のレーザーは、全く新しい設計思想によらないと実現できない。触媒反応をリアルタイムで観察したり、膜タンパクなどの構造解析などを可能とする夢の光として、日本、欧州、米国が激しい開発競争を繰り広げている。

 波長が短いX線自由電子レーザーを理想的に反射させるために大型集光鏡が必要とされ、その大型集光鏡は、鏡面全領域で原子レベルの精度の表面加工が求められていた。

 山内和人・大阪大学大学院教授と大森整・理化学研究所基幹研究所主任研究員らは、それぞれが開発した超精密加工技術「EEM法」と高精度研磨技術「ELID法」を組み合わせ、40センチの長さの集光鏡を作り上げることに成功した。

 X線自由電子レーザーによって期待されている膜タンパクの構造解析は、医学や創薬の分野で重要視されているが、結晶化することができないため、現在のX線解析法は使えない。X線自由電子レーザーでタンパク質1分子にX線を照射することによって構造解析が可能で、そのためには、X線自由電子レーザーの強度をさらに高めることが不可欠とされていた。

 X線自由電子レーザー装置は、「国家基幹技術」プロジェクトとして2010年の完成を目指し、兵庫県播磨科学公園都市で建設が進んでいる。

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