膜タンパク質の構造解析やナノテクノロジーの材料開発など多彩な分野で画期的な研究成果をもたらす光源と期待される短波長自由電子レーザーを発生させる新しい方法が、理化学研究所の研究チームによって開発された。
波長が短い光を光源とする研究装置ほど新たな研究領域の開拓に威力を発揮することは、理化学研究所の大型放射光施設(SPring-8)によっても明らかといえる。ただ、放射光は電球と同じで、1つの光パルスに数多くの位相の異なる光が含まれている。このためより高性能の装置として、短波長自由電子レーザーが注目されている。これまで多くの研究が進められているが、光パルスの進行方向の位相をそろえることがネックになっていた。
理研放射光科学総合研究センターの原徹・専任研究員らは、ガス高次高調波という入射した光の整数倍の周波数を持つ光を用い、これを増幅されることでこの難題を克服した。この結果、世界で初めて真空紫外領域という短波長の自由電子レーザー発信に成功した。
現在、紫外領域よりさらに波長の短いX線自由電子レーザーの開発競争が、理化学研究所を初め、世界の有力研究機関で進められている。原徹・専任研究員らが開発した手法は、より波長の短い光にも応用できることから、理研が2010年の完成を目指して開発中のX線自由電子レーザー装置の小型化にも貢献すると期待されている。