総合科学技術会議が、地域から意見を聞くために「科学・技術ミーティングin大阪」を20日に開いた。会議で出た主な発言は、同会議の関連サイトで見てもらうとして、若手研究者から出された意見を主に紹介したい。
科学技術政策をフラットでオープンなものに転換すべきだ、と強く訴えたのは榎木英介 氏・NPO法人サイエンス・コミュニケーション理事(サイエンス・サポート・アソシエーション代表、病理診断医)。氏は、若手研究者の声が各分野のトップ研究者のフィルターを通して各省庁に伝えられ、各省庁が省益に基づいて総合科学技術会議に伝えて科学技術政策が形作られているイメージがある、と指摘した。関係者が等しく意見が言える仕組みが必要だとしている。
ポスドクなど若手研究者を失業者、敗者ではなく公的な財産(人財)としてとらえ、能力を活用するための施策が必要だ、とも氏は訴え、社会とのコミュニケーション、新しい職業領域や雇用を生み出すNPOやベンチャーなど研究以外にも活躍の場を広げるために、大学と社会を行き来できるよう年齢制限や専従規定といった規制の緩和を求めた。
宮川剛 氏・藤田保健衛生大学総合医科学研究所教授は、行政刷新会議の事業仕分け後にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で盛り上がった研究者の議論とアンケートに基づく提言を行った。氏によると単年度予算主義の無駄があるとアンケートで答えた人は9割に上る。年度を越えて予算を楽に使えるようにすれば、年度末の駆け込み購入や残金をゼロにするために努力するといった無駄の削減に加え、研究費を節約しようという動機付けや、預かり金の根本的消滅、年度末の報告書・計画書の削減など、膨大な効果があると指摘した。
さらに、科学・技術政策が一部の科学者とのやりとりだけで決まっており、サイエンスコミュニティ自体も分野ごとに独立し、ヒエラルキー(階層構造)がある現状を指摘し、分野横断的な科学・技術研究者の組織の立ち上げを提言した。
上田泰己 氏・理化学研究所発生・再生科学総合研究センターシステムバイオロジー研究プロジェクトリーダーは、ライフイノベーションを実現するためには、ヘテロジェナイティ(異質なものが同居・競争・協同する仕組みつくり)とリーダーシップを持った人材の育成が重要と主張した。税金と寄付金との間に競争関係を持ち込むため、現在数パーセントしか所得控除されない特定寄付(教育・研究)を全額税額控除すべきだとしている。
異質なものを束ね、導くリーダーシップを醸成するため、科学・技術関連予算の1%(約350億円)について、20-30代に計画、実行、評価、改善の権限を委譲することも提案した。
総合科学技術会議は現在、再来年度予算に向けてアクション・プランの策定作業を進めている。30日には「競争的資金の使用ルール等の統一化に関するタスクフォース」と「ライフ・イノベーションタスクフォース」が、31日には「グリーン・イノベーションタスクフォース」の初会合が予定されている。こうした作業に若手研究者からの提案がどのように取り入れられるのか、注視したい。