日本学術会議は、大型研究計画の策定に当たって科学者コミュニティが主体的に寄与できる体制整備を求めた提言「学術の大型施設計画・大規模研究計画-企画・推進策の在り方とマスタープラン策定について-」を公表した。
粒子加速器や大型望遠鏡など施設の建設自体に巨額の費用を要する「大型施設計画」に比べ後回しになっていた観のある「大規模研究計画」の重要性を指摘しているのが特徴。具体的には、「臨床研究推進による医学知の循環と情報・研究資源基盤の開発研究計画」「創薬基盤拠点の形成」など海外諸国に比べ立ち遅れが指摘されている医療分野の研究計画のほか、「日本語の歴史的典籍のデータベースの構築」「心の先端研究のための連携拠点構築」など、膨大なデータベースの構築が必要となる人文・社会科学分野の計画などが提案され、研究推進のマスタープランを示している。
大型研究施設を必要とする「大型施設計画」としては、「衛星による全球地球観測システムの構築」「一平方キロメートル電波干渉計計画」「大型先端検出器による核子崩壊・ニュートリノ振動実験」などが挙げられており、それぞれ計画年度や費用を含めた計画の概要、意義などが盛り込まれた。
大規模研究計画は、科学者が主体となって立案されるボトムアップ的性格を持つが、「最終的な予算化段階や成果の公開で社会への説明が十分なされているとはいえない面があった」と提言は指摘している。また、トップダウン的、国策的な大型施設計画においても、さらに多額の予算が投入される一方、「計画策定や決定のプロセスに科学者コミュニティが十分に寄与することができず、透明性や科学的視点に基づく評価、適切な利用体制などが不十分なケースも少なくなかった」としている。