太平洋島嶼国の環境と支援を考える国際シンポジウム(2008年6月19日、環境省、外務省 主催)講演から
ツバルは9つの小さなサンゴ環礁から成る。総面積は26平方キロ。総人口約11,000人のうち、約4,000人が首都フナフティに住む。われわれは、人間がもたらした気候変動による深刻な脅威に直面している。ツバルは、いま気候変動の影響に対し世界で最も脆弱(ぜいじゃく)な国の一つになっている。
サンゴは、熱ストレスに弱い。ツバルのサンゴは少しずつではあるが白化が起きており、今後、増えていくとみられている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今後30-50年間、毎年、白化現象は起こると予測している。サンゴ礁は、高潮の最初の防護壁で、サンゴの白化が起きると島民の主たるタンパク源である魚類も減ってしまう。
温室効果ガスによる気温上昇は、海水温の上昇ももたらす。温められた海は、サイクロンのような気象現象をさらに深刻なものにする。研究結果によると、カテゴリー4や5クラスの嵐が1975-89年から90-2004年の期間に倍増すると予測されている。
海水温の上昇と極地の氷、氷河の溶解は海面上昇をもたらし、海面からの土地の高さが低いツバルは、海面上昇の影響にも脆弱だ。南太平洋大学のある教授は、ツバルの一部は海面上昇のためこの30年のうちに人が住めなくなるかもしれないと言っている。
激しい気象現象とは別に、気象学者は、ツバルはより深刻なかんばつに対しても脆弱になるかもしれないと言っており、実際そうなりつつある。現在、ツバルは雨水のほかには水資源を環礁の下にある薄い淡水層に依存しているが、海水の浸入は、タロイモやココナツのような脆弱な農作物類の生育も困難にしつつある。
日本に支援してほしいことは、沿岸域の保全だ。植林、人工砂州(さす)、海岸防護壁などの構築によって、激しい気象変化に弱い沿岸域の住居を守る資金を支援してほしい。雨水の回収、貯蔵法や地下の淡水層を海水の浸入から守る方法の改善、下水処理の改善、家畜の糞尿(ふんにょう)を回収して肥料やメタン生産に結びつける処理法の改善なども支援してほしい。
また、輸入燃料の高騰がツバル経済の大きな重荷になっている。われわれは燃料の輸入依存度を下げるために再生可能なエネルギーの開発と省エネルギー技術を必要としている。全島に太陽光発電システムを展開し、風力やバイオ燃料といった再生可能なエネルギーを探求、導入したい。日本の支援に期待している。