安倍首相が「世界全体の温暖化ガスの排出量を2050年までに半減する」との目標を盛り込んだ日本政府の構想を明らかにした。
日経新聞以外の読者の中には「都内で開かれた会議での講演で表明した」といった伝え方に、引っかかりを感じた人もいるかもしれない。日経新聞主催の国際交流会議「アジアの未来」での講演だった。
マスコミが主催する会議の内容を、他のマスコミ各社が大きく取り上げるというのは、そうそうないように思われる。しかし、今回は、主催者の日経新聞は当然として、朝日、毎日、読売、産経各紙とも1面で大きく伝えただけでなく、それぞれ、背景などを書き込んだ関連記事を総合面や政治面に載せている。日経、朝日、毎日、読売はさらに社説でも、取り上げるという手厚い報道ぶりだった。(東京新聞は総合面で報道)
講演内容が、それだけの重みがあったことに加え、首相側からの事前の入念なブリーフィングが想像できる。この点については、毎日新聞の総合面記事を読んで納得できた。「今回の提案は、政府部内で別名『安倍イニシアチブ』と呼ばれる。首相を中心に官邸主導で練り上げられた」という。
6月の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)に向けて、既に欧州連合(EU)は「温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で20%以上削減する」という独自の目標を設定している。
今回の方針表明について「安倍首相が2050年の半減を含め次の枠組みに言及した意味は大きい」(日経社説)という評価がある一方、「日本自身が最大限の努力をしてこそ、提案の説得力が増す」(読売社説)、「ポスト京都に途上国の参加を促すためには、先進国が率先して排出削減が可能であることを示す必要がある」(毎日社説)、「削減の仕組みをつくるには、各国への義務づけがすべての出発点になる」(朝日社説)など、安倍首相の提案に欠けている部分についての指摘も多々、見られた。(毎日、日経、読売、朝日新聞の引用は東京版から)