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人になつく動物の遺伝子領域を解明 国立遺伝学研究所

2017.07.06

 人になつく動物の行動に関わる遺伝子領域を解明した、と情報・システム研究機構国立遺伝学研究所などの研究グループが4日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に発表した。人になつくマウス集団を作るというユニークな試みの研究成果で、これまで家畜化が難しかった多くの動物の家畜化に道を開く可能性があるという。

 国立遺伝学研究所の小出剛(こいで つよし)准教授と松本悠貴(まつもと ゆうき)さんらと英国ロンドン大学研究者との共同研究グループは、日本のほかカナダ、ブルガリア、デンマーク、フランスなど世界8カ国から集めた遺伝的多様性を持つ野生マウスの集団を作成。この中から人の手を恐れずに近づき、「能動的従順性」をある程度示すマウスを選んで交配する選択交配を何度も繰り返すことにより、高い能動的従順性を示すマウスの集団を作った。「ペット化したマウス」を作ることに成功したことになる。この人になつくマウス集団と、選択交配しないで無作為に交配させたマウス集団の2集団間の遺伝子配列を比較した。

 その結果、11番染色体上にある「ATR1」と「ATR2」という2つの遺伝子領域が、能動的従順性に関連していることが判明。ペットのイヌの遺伝子も解析したところ、イヌの9番染色体上にもこの遺伝子領域があり、高い能動的従順性に関わっていることが分かったという。また、こうした遺伝子領域には心のバランスを整える神経伝達物質として知られるセロトニンの量を調節する遺伝子が含まれており、研究グループは、この遺伝子が人になつきやすい性質に関与している可能性があるとみている。

 イヌやネコのほか家畜動物の多くは、高い能動的従順性を示すが、この性質がどのような遺伝的仕組みによりもたらされるのか不明だった。今回の研究成果について小出准教授らは、動物の育種技術の発展や新たな家畜動物の開発などへの応用が期待できる、としている。

図 選択交配により自ら人に近づくマウスを作成して解析したところ、11番染色体上のゲノム領域が人に近づく行動に重要だった。また、この領域はイヌの家畜化に関するゲノム領域と相同だった(図の説明文と概念図は国立遺伝研究所など研究グループ作成・提供)
図 選択交配により自ら人に近づくマウスを作成して解析したところ、11番染色体上のゲノム領域が人に近づく行動に重要だった。また、この領域はイヌの家畜化に関するゲノム領域と相同だった(図の説明文と概念図は国立遺伝研究所など研究グループ作成・提供)

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