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脳波で500種類以上のメッセージ発信

2010.03.30

 話すことや文字を書くのが不自由な重い運動障害者の脳波を読み取り、500種類以上のメッセージを人工音声で発信できる「ニューロコミュニケーター」を産業技術総合研究所の研究者が開発した。

 この意思伝達装置の本体であるモバイル脳波計の大きさは携帯端末の半分程度。無線方式のためヘッドキャップに直接取り付けることができ、コイン電池で長時間動くことから外出時にも使用可能という。研究者は、2、3年後をめどに10万円程度で製品化することを目指している。

 産業技術総合研究所脳神経情報部門の長谷川 良平・ニューロテクノロジー研究グループ長が用いた手法は、脳と外部機器との直接入出力を行う「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」と呼ばれる技術。脳科学の分野で急速に発展し、有力な研究領域となっている一方、BMI技術の多くが研究開発段階にあり、装置、使用法が複雑で実用的なアプリケーションの開発も遅れている現実がある。

 長谷川グループ長は、脳波を読み取って意思を確認するための解読アルゴリズムを改良し、1回の選択に2-3秒しか要せず、しかも90%以上の予測精度を得ることに成功した。さらに得られた脳波計測値から伝えたいメッセージを絞り込む独特の意思伝達システムを開発し、短時間で最大512種類のメッセージを人工音声で発信することを可能にした。

 これらの技術を組み合わせた「ニューロコミュニケーター」によって、筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症など重度運動障害者の支援のほか、脳波を読み取ってその情報を活用する新しい産業分野の創出にも貢献できると研究者たちは期待している。

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