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月南極のクレータ底にも氷見られず

2008.10.27

地形カメラがとらえたシャックルトンクレータ ( 提供:宇宙航空研究開発機構 )
地形カメラがとらえたシャックルトンクレータ ( 提供:宇宙航空研究開発機構 )

 氷が存在する可能性が期待されている月南極のクレータ底にも氷は見つからなかったことが、月周回衛星「かぐや(SELENE)」搭載の地形カメラによる観測で明らかになった。この結果は、米科学誌「サイエンス」最新号に掲載された。

 宇宙航空研究開発機構の地形カメラ観測機器チーム(主研究者:春山純一・宇宙科学研究本部固体惑星科学研究系助教)は、南極点近く(南緯89.9度、東経0.0度)にある直径21キロのシャックルトンクレータを地形カメラで観測した。氷と見られる高い反射率の場所はなく、クレータ底部の表面付近に氷が露出した形で大量に存在する可能性はないことが分かった。

 月の南極は太陽の光が年間を通してほぼ真横からしかあたらないため、シャックルトンクレータの底には永久影と呼ばれる年間を通じ太陽光が全く当たらない部分がある。氷があれば40億年かかっても数センチしか減らないはずであるため、氷が見つかる可能性が高い場所と考えられていた。米国のクレメンタイン衛星(1994年打ち上げ)によるレーダ実験で氷の存在が示唆され、米国のルナープロスペクター衛星(98年打ち上げ)の中性子分光計による観測でもり、シャックルトンクレータを含む南極域に水素の存在が示唆されている。ただし、水素が氷の形で存在するかどうかまでは分かっていなかった。

 観測チームは、今回の観測結果から、クレータ底に氷があったとしても非常に少ない量で土と混ざっているか、あるいは土に隠れてしまっていると見ており、これは「氷はあっても数パーセント」というルナープロスペクター衛星の観測で推定された結果と一致すると言っている。

 太陽光が当たらないシャックルトンクレータの底を地形カメラで観測することができたのは、同クレータの縁が水平面に対して約1.5°だけ傾いており、太陽が傾いた方向に来るときだけクレータ斜面への入射が多くなり、内部を照らす散乱光も多くなるため。「かぐや」の地形カメラは、昨年11月、観測機器の初期機能確認期間に、年に数日しかないこの機会をとらえ撮影に成功した。

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