月周回衛星「かぐや」とリレー衛星「おきな」の連携プレーによる重力観測の結果、月の裏側の地下構造は、地球から見える表側と大きく異なることがはっきりした。表側と裏側で重力異常の明確な差が表れたことは、地下の構造や形成の歴史が異なっていたことを示している、と宇宙航空研究開発機構などは言っている。
月の裏側の重力異常はこれまでほとんど分かっていなかった。今回の重力観測データは、臼田宇宙空間観測所(長野県佐久市)から「おきな」を経由して月の裏側を回っている「かぐや」に信号を送信、逆のルートで臼田宇宙空間観測所(長野県佐久市)へ戻って来る信号を解析することで得られた。月の裏側の重力の変化で「かぐや」の軌道にわずかなぶれが生じるのを、信号の周波数が変化するドップラー効果を利用して検知する。
観測の結果、アポロ盆地はマイナスの重力異常が見られ、地形の凹みや、地下に軽い物質が埋もれていることを示していた。さらにこの重力異常は同心円状に違いが見られた。表側の盆地の「晴れの海」は、プラスの重力異常が観測され、これは地表面の玄武岩溶岩と、地下のマントルの隆起によると見られている。今回、月の裏側で明らかになった観測結果は表側とは大きな違いがある。
観測データが増えれば、もっと多くの地域で表側と裏側の違いがより正確にわかることから、月の起源と進化の研究がさらに進展する、と観測陣は期待している。