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福島原発事故についての政府事故調・最終報告書の要旨〈その1〉

2012.09.18

 7月23日に「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(畑村洋太郎委員長、政府事故調)が提出した最終報告書の要旨は次の通り。

第Ⅰ章 はじめに

  • 当委員会は、今回の事故の原因および事故による被害の原因を究明するための調査・検証を、国民の目線に立って開かれた中立的な立場から多角的に行い、被害の拡大防止および同種事故の再発防止などに関する政策提言を行うことを目的として、2011年5月24日の閣議決定により設置された。
  • 今回の事故に関する調査・検証は、事故の当事者である東京電力や、規制当局である経済産業省原子力安全・保安院(以下「保安院」)などによっても行われており、また、政府の原子力災害対策本部から、国際原子力機関(IAEA)に対して日本国政府の報告書も提出されているが、当委員会は、これらとは別に、従来の原子力行政から独立した立場で、技術的な問題のみならず制度的な問題も含めた包括的な検討を行うことを任務として調査・検証を行った。
  • 当委員会は、同年6月7日に第1回委員会を開催して調査・検証に着手し、同年12月26日の第6回委員会において中間報告を取りまとめた。
  • 中間報告については、2012年1月20日、福島県内の地方自治体関係者の出席を得て説明会を開催した。また、当委員会は、調査・検証の内容を国際的な関心に応えるものにするため、同年2月24、25の両日にわたって開催した第8回委員会において、海外5カ国(アメリカ合衆国、フランス、スウェーデン、大韓民国、中華人民共和国)から、国際的に著名な原子力、放射線などの専門家を招へいして、中間報告を基に最終報告に向けた調査・検証について意見交換を行った。当委員会は、このような意見交換の結果も踏まえてさらに調査・検証を進め、同年7月23日の第13回委員会においてこの最終報告を取りまとめた。
  • 当委員会では、主として事務局を通じ、東京電力、保安院、原子力安全委員会をはじめとする関係事業者、関係機関から資料の提出を受けてこれを分析するとともに、これらの役職員、構成員や、菅直人前内閣総理大臣をはじめとする事故発生当時の閣僚、更には学識経験者なども含めて幅広く関係者のヒアリングを行った。これまでにヒアリングを行った関係者の人数は772名、総聴取時間は概算で1,479 時間に上っている。

第Ⅱ章 福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所における被害状況と事故対処

 《諸現象に関する解析》

  • 本件事故に係る炉心損傷開始時間、その他の過酷事故に伴う諸現象に関して、東京電力が2011年5月および12年3月に公表した解析(MAAP解析)、原子力安全基盤機構(JNES)が11年9月に公表した解析(MELCOR解析)があるが、当委員会が行った圧力容器や格納容器の健全性に関する検証の結果とは一致しなかった。
  • これらの解析は、現実に起こり得る複雑な現象を単純化したモデルで扱っている上、不確かな仮定条件などに基づき実施されており、必ずしも実態を正確に反映したものではない。
  • 問疑しないまま解析結果を受け取ることは、それが定量的なものであるが故に、あたかも事実であるかのような誤解を生み、真実を見誤る危険を相当にはらんでおり、解析結果を決して盲信してはならない。
  • これらの解析は、例えば、2号機の格納容器圧力や3号機の原子炉水位などの実測データとかい離する部分が相当認められるにもかかわらず、そのかい離の原因について何らの解明もなされていないといった不十分さも残っている。

 《主要施設・設備の被害状況》

福島第一1号機

  • 「圧力容器」地震発生直後から津波到達までの間、その閉じ込め機能を損なうような損傷が生じた可能性は否定される(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)。しかし、津波到達以後、非常用復水器(IC)による冷却や代替注水がなされず、圧力容器内が高温、高圧状態下に置かれ、3月11日20時7分ごろ以降、12日2時45分ごろまでの間に、溶融燃料落下による圧力容器底部の破損の可能性を含め、閉じ込め機能を喪失させるような損傷が生じていた。
  • 「格納容器」地震発生直後から津波到達までの間、閉じ込め機能を大きく損なうような損傷が生じていたとまでは認められない(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)。しかし、3月11日21時51分ごろまでに、その機能を損なうような損傷が生じていた可能性があり、さらに遅くとも12日未明までには、格納容器内が高温、高圧の状態に置かれ、閉じ込め機能を損なうような損傷が生じていたと考えられ、その後もさらに大きな損傷が生じた可能性がある。
  • 「非常用復水器(IC)」地震発生から津波到達までの間、その配管および復水器タンクに、冷却機能を喪失させるような損傷が生じていたとは認められない(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)。
  • 「高圧系注水系(HPCI)」地震発生から津波到達までの間に、注水機能を喪失するような損傷が生じていた可能性は低い。しかし、遅くとも津波到達後には、全ての電源が喪失したことにより起動不能に陥った。

福島第一2号機

  • 「圧力容器」地震発生直後から津波到達までの間、閉じ込め機能が損なわれるような損傷が生じた可能性は否定される(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)。しかし、3月14日9時以降、徐々に原子炉隔離時冷却系(RCIC)の注水機能が低下していき、同日12時半ころまでには停止した。同日19時57分以降、代替注水を開始するも、断続的かつ不十分な注水量しか確保できず、同日21時18分ごろまでには、圧力容器またはその周辺部に、閉じ込め機能を損なうような損傷が生じた。それ以降も、原子炉水位を十分確保できず、閉じ込め機能をさらに大きく損なうような損傷が生じていった可能性が高い。
  • 「格納容器」地震発生直後から津波到達までの間、閉じ込め機能を大きく損なうような損傷が生じていたとは認められない(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)。しかし、14日13時45分ごろ以降、同日18時10分ごろまでの間、閉じ込め機能を損なうような損傷が生じていた可能性が十分認められる。さらに、福島第一原発正門付近の放射線量測定の結果、15日7時38分ごろ以降、同日9時ごろに測定された1万1930マイクロシーベルト毎時をピークに、翌16日4時ごろまでの間、数百-数千マイクロシーベルト毎時を示しており、このころ、2号機の格納容器またはその周辺部に、閉じ込め機能をさらに大きく損なうような損傷が生じ、環境に大量の放射性物質を放出した可能性が高い。また、いずれかの時期に、圧力抑制室(S/C)またはベント管のいずれかの箇所に破損が生じていた可能性も高い。
  • 「原子炉隔離時冷却系(RCIC)」地震発生直後から作動しているので、そのころ、注水機能を喪失するような重大な損傷が生じていた可能性は否定される(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)。津波到達により、隔離弁の駆動用電源や、「原子炉水位高」による起動停止信号などの運転・制御に必要な直流電源を喪失したが、隔離弁自体が電源喪失時の開閉状態のまま維持される仕組みだったので、RCICは制御不能のまま作動し続けた。

しかし、14日9時ごろ以降、RCICのタービン回転数が低下していく中で、原子炉圧力が上昇し、次第にRCICによる注水量が低下していき、遅くとも同日12時ころまでには注水機能を喪失した。

  • 「高圧注水系(HPCI)」地震発生から津波到達までの間に、注水機能を喪失するような損傷が生じていた可能性は低いが、遅くとも、津波到達後には、全ての電源が喪失したことにより、起動不能に陥った。

福島第一3号機

  • 「圧力容器」地震発生直後から津波到達までの間、閉じ込め機能を損なうような損傷が生じた可能性は否定される(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)。しかし3月12日20時36分ごろ以降、高圧注水系(HPCI)による十分な注水が次第にできなくなって原子炉水位が低下していき、翌13日2時42分ごろ、当直がHPCIを手動停止した。その後数時間にわたって全く注水がなされず、同日6時30分ごろから9時10分ごろまでの間に、圧力容器またはその周辺部に、閉じ込め機能を損なうような損傷が生じた可能性が高い。その後14日5時ごろまでの間、全く代替注水がなされない時間が2時間以上続いたり、十分な注水量を確保できなかったりしたため、BAF(有効燃料下端)を上回る原子炉水位を十分確保できず、炉心損傷が進行し、閉じ込め機能をさらに損なうような損傷が生じた。
  • 「格納容器」地震発生直後から津波到達までの間、閉じ込め機能を損なうような損傷が生じていたとまでは認められない(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)。しかし13日2時42分ごろ以降、翌14日2時20分ごろまでの間に、そのような損傷が生じた可能性は否定できない。さらに同日7時ごろから21時35分ごろまでの間になると、閉じ込め機能を大きく損なうような損傷が生じた可能性は十分認められ、それ以降も、さらに大きな損傷を生じた可能性がある。
  • 「原子炉隔離時冷却系(RCIC)」地震発生以降、流量が制御されながら作動しており、注水機能に影響を及ぼすような損傷はなかった。そして12日11時36分ごろにRCICが停止し、その後再起動できなくなった。その原因として、RCICの蒸気止め弁の機械機構部の不具合により開状態を維持できなくなった可能性があるものの、現時点においてもなお不明だ。
  • 「高圧注水系(HPCI)」地震発生直後、その機能に影響を及ぼすような損傷が生じた可能性は否定され(軽微な亀裂、ひび割れなどが生じた可能性まで否定するものではない)、12日12時35分ごろ以降も、そのような損傷は認められない。しかし、長時間の運転に伴い、運転、制御に必要な直流電源を消耗していき、13日2時42分ごろに手動停止後、電源枯渇により再起動できなくなった。

 《水素ガス爆発に関する検討》

福島第一1号機

  • 2号機R/Bについては、建屋東側壁面のブローアウトパネルが脱落したこと以外に、外見上、顕著な損傷が認められない。
  • 格納容器から2号機R/B内に漏えいした水素の多くは、蒸気とともにブローアウトパネル開放部から建屋外に放出され、これにより、2号機R/B内に蓄積する水素の量が抑制され、水素爆発が発生しなかった可能性が高い。
  • 15日6時から6時12分ごろにかけて確認された異音は、敷地内の地震計データの解析の結果、4号機R/B爆発によるものと考えられ、2号機の圧力抑制室(S/C)由来のものとは考え難い。
  • しかし、このことは、同時刻の前後において2号機S/Cが健全性を維持していたとする趣旨ではない。

福島第一3号機

  • 3号機R/B爆発(14日11時1分ごろ)の原因は、可燃性ガスによるものと考えられる。可燃性ガスは、主として、3号機の圧力容器内の炉心損傷過程で、ジルコニウム-水反応によって発生した水素と考えられる。
  • 損傷状況から、3号機R/Bの5階に水素が蓄積して「爆ごう」が起きたと仮定すると、爆ごうを引き起こすには約371.0kgの水素が必要となる。
  • それまでには、すでに圧力容器またはその周辺部、格納容器またはその周辺部には、それぞれ閉じ込め機能を損なうような損傷が生じていた可能性が高く、これらの発生した水素は、大部分が格納容器外に漏えいしたと考えても矛盾はない。
  • 東電によれば、3号機R/Bの5階は数百ミリシーベルト毎時程度の線量であるのに対し、1-4階は平均すると数十ミリシーベルト毎時であることから、格納容器上部からの漏えいが中心だったと考えられる。

福島第一4号機

  • 15日6時から同6時12分にかけて、4号機R/Bの4階で爆発が生じ、同4階南西部から垂直両方向に大きな圧力がかかり、付近の機械搬入用ハッチ開口部や階段を通じるなどして、爆風が上下フロアに勢いよく達し、建屋内部構造物を損壊するとともに、3階から5階部分の壁面の相当部分を減失・損壊し、吹き飛ばされずに残存している北側壁面およびコンクリート柱も外側へ大きく屈曲し、R/B屋根も骨組みを残して吹き飛ばされた可能性がある。R/B3階および5階においても、その一部空間に水素が蓄積し、爆発を引き起こした可能性は否定できない。
  • 爆発の原因と考えられる可燃性ガスは、4号機R/B内には見当たらない。それは主として、3号機側から非常用ガス処理系(SGTS)配管を通じて4号機R/B内に流れ込んだ水素と考えられる。

 〈福島第一5号機、6号機における事故対処〉

  • 3月11日の地震発生当時、5号機、6号機は定期検査のため原子炉を停止しており、運転中のプラントと比較して崩壊熱が低く、原子炉水位も十分に確保されている状態だった。
  • 津波到達後、5号機は全交流電源を喪失したが、隣接する6号機は、非常用ディーゼル発電機(非常用DG)1台が作動を継続し、交流電源が確保されていた。このため、6号機から5号機へ電源融通を行うことで、両号機の中央制御室において各種監視計器が確認でき、原子炉圧力の減圧、原子炉への注水といったプラント制御に必要な操作を行うことができた。
  • しかし、両号機は津波の影響で海水系ポンプが被害を受け、残留熱除去系(RHR)を起動させることができない状況となったことから、原子炉の減圧および注水を継続して原子炉を制御しながら、RHRの復旧を進めるという方針で事故対処に当たり、RHR復旧後、水温が上昇していた使用済燃料プール(SFP)の冷却に引き続き、原子炉を冷却し、同20日に冷温停止に至った。

 〈福島第二原子力発電所における事故対処〉

  • 3月11日の地震発生とともに、津波が福島第二原発に到達した。福島第一原発とは異なり、津波到達後においても外部電源による電力供給が継続している状況にあった。
  • このため、各種監視計器によりプラントの状態を把握することが可能な状態であり、原子炉の減圧、原子炉への注水といったプラント制御に必要な操作についても特段の復旧を要せずに実施することができた。
  • しかし、非常用海水ポンプや電源盤の被害により、3号機の1系統を除き、残留熱除去系(RHR)を起動させることができなかったことから、RHRを復旧させるまでの間、原子炉注水により原子炉水位を維持して燃料の露出を防ぐという方針で事故対処にあたり、同15日までに全号機の冷温停止に至った。

 《福島第一原発および福島第二原発における事故対処の状況と比較》

高圧注水から低圧注水への切替状況

  • 運転中の原子炉を停止した直後の崩壊熱は非常に大きく、原子炉への注水が途切れることになれば、原子炉水位が低下して燃料が露出し、炉心の損傷に至るおそれが大きい。炉心損傷を回避し、原子炉を安定的に冷却するためには、燃料を露出させないよう原子炉への注水を間断なく実施する必要がある。
  • 原子炉注水手段を切り替えるに当たっては、その切替を速やかに実施するとともに、不測の事態により原子炉への注水が途切れることがないよう、細心の注意をもって実施しなくてはならない。
  • したがって、高圧注水手段から低圧注水手段に切り替えるに当たり、東電が作成した運転操作手順書や福島第二原発における事故対処から明らかなとおり、高圧注水手段が機能している間に、SR弁(主蒸気逃がし弁)による原子炉減圧操作を行い、必要に応じて急速減圧操作を実施して、速やかに低圧注水手段に移行する必要がある。
  • このような手順を確実に実施するには、高圧注水手段が機能している間に、プラントの具体的な状況に即して、低圧注水手段に切り替えるために必要な措置を確実に講じておかなければならない。
  • 「福島第一3号機」
  • 間断なく原子炉注水を実施するためには、高圧注水系(HPCI)作動中の3月12日夜に、HPCIの継続運転に懸念を抱き始めた時点で、余裕を持って代替注水ラインを構成し、原子炉を減圧すればいつでも確実に注水が可能であることを確認した上で、必要に応じてSR弁による原子炉減圧操作を実施して、代替注水手段に移行すべきであった。しかしながら、必要な措置を行っていなかった。
  • 第一発電所対策本部および当直は、12日夜の段階で、高圧注水系(HPCI)の注水機能に疑問を抱いたり、設備破損のおそれを懸念していたりしていたのに、この段階では、HPCIの次なる代替注水手段、すなわちディーゼル駆動消火ポンプ(D/DFP)による原子炉注水ラインを構成しようとしなかった。D/DFPによる原子炉注水ラインの構成作業は、3号機当直のみでなし得る作業であり、同日夜、仮に第一発電所対策本部が1号機、2号機における事故対処に追われていたとしても、D/DFPによる原子炉注水ラインを構成しなかった理由にはならない。
  • 3号機の当直は、高圧注水系(HPCI)を手動停止する際も、D/DFPによる原子炉注水ラインの構成が完了したか否かの確認をしないまま、HPCIを手動停止した。
  • 当直がSR弁(主蒸気逃がし弁)による原子炉減圧操作を試みたのは、HPCI停止後であり、D/DFPによる原子炉注水ラインの構成が完了したか否かの確認もなされていなかった。
  • 今回のような過酷事故への対処に当たっては、SR弁が開かない事態があり得ることも想定し、HPCIが作動している間にSR弁の開操作を実施し、仮に開状態とならない場合には、HPCI作動中に原因を究明して復旧をする必要があり、それだけの時間的余裕をもってSR弁による原子炉減圧操作を実施すべきであった。
  • 間断なく原子炉への注水を実施するための必要な措置が取られていたとは認められない。

圧力抑制室(S/C)水温およびS/C圧力の監視ならびにその後の対応

  • 「福島第一2号機」
  • 当直は、3月12日4時ごろ、原子炉隔離時冷却系(RCIC)の水源となっていた復水貯蔵タンク(CST)の水位低下を認め、その水位を確保するとともに、S/Cの水位上昇を抑制するために、同日4時20分から5時ごろにかけて、RCICの水源をCSTからS/Cに切り替えた。
  • これにより2号機は、残留熱除去系(RHR)が機能していないにもかかわらず、S/Cを水源としてRCICが作動し続けることになり、いずれ圧力容器とS/Cとの間を循環する水または蒸気の温度が上昇し、S/C水温およびS/C圧力が上昇することとなった。
  • RCICが作動しなくなった場合にとり得る代替注水手段としては、消防自動車を用いた消火系(FP系)しか残されていなかった。消防車を用いたFP系による原子炉注水を実施するに当たっては、SR弁による原子炉減圧操作が不可欠であったが、当直は、S/Cが高温かつ高温の状況にあることを把握してからも、SR弁による原子炉減圧操作を行わなかった。
  • 14日12時ごろ以降、原子炉水位の低下が顕著となり、同13時25分ごろ、第一発電所対策本部はRCICが停止したと判断した。同14時43分ごろ、消防車を用いたFP系による原子炉注水ラインを構成し、同16時30分ごろに、消防車を起動させ、原子炉を減圧すればいつでも海水注水可能な状態とした。
  • 同16時34分ごろ、第一発電所対策本部復旧班は、中央制御室において、バッテリーを制御盤裏につなぎ込み、SR弁の電磁弁を強制励磁して、SR弁による原子炉減圧操作を開始したが、原子炉減圧に手間取り、結果として、同19時3分ごろになって、ようやく消防車を用いたFP系による原子炉注水が可能となる程度まで減圧することができた。
  • しかし、消防車が燃料切れのため作動停止していることが確認され、燃料を補給した上で、同19時57分ごろになってようやく原子炉への注水が開始された。

 〈問題点〉

  • 福島第一2号機では、原子炉隔離時冷却系(RCIC)停止後、S/Cの圧力抑制機能が大きく損なわれた状況下において、原子炉減圧操作に手間取り、消防車によるFP系を用いた代替注水開始まで時間を要したばかりか、その後も十分な減圧状態を維持できず、断続的かつ不十分な代替注水しかなし得なかった。
  • これは、第一発電所対策本部および当直が、いつ停止するかも分からないRCICが動いていることに過度に気を許し、2号機の状況を実際よりも楽観視していたため、圧力抑制室(S/C)水温およびS/C圧力を継続的に監視した上で、S/Cの圧力抑制機能を適切に評価する必要性についての意識が希薄であったことに起因するものと考えられる。
  • 以上のように、2号機における事故対処は、福島第二原発におけるそれと比べて、具体的なプラントの状況を踏まえた上で、事態の進展を的確に予測し、事前に必要な対策を取るというものにはなっておらず、間断なく原子炉への注水を実施するための必要な措置が取られていたとは認められない。

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