幼なじみというのはありがたい。当サイトの熱心な読者でしばしばなるほどと思う的確な指摘や助言を寄せてくれる古い友人がいる。大学は仙台と東京に分かれてしまったが、小学校から高校まで一緒だった。
「今までこんな欄があるとは知らなかった」。ちょっと前にそんなメールが来て、「編集だより」を1回目から読み始めてくれているというのである。この日は2008年5月3日、つまりちょうど2年前まで読み進んだと言って、その日の記事について長文の感想を寄せてくれた。2年前のこの日の編集だよりというのは、プロバスケットボールのbjリーグを観た感想をつづった記事である。
「投手と捕手以外、ほかの選手は動いていないことがほとんどだから野球はつまらない。ボールの周囲にいる選手を除くと、意外に動いていない選手が多いサッカーもまた。その点、バスケットボールはいつも全員が動き回っているから面白い。テレビなどでどうして野球だけが注目されるのか不満だ」
日本バスケットボールリーグ(JBL)のファイナルで田臥勇太を擁するリンク栃木ブレックスが日本一になったことに対する感想の後に、こんなコメントが付いていた。
当方が中学、高校とバスケットをやっていたことを知っているから、とは思ったもののうれしくないわけはない。それでこちらもその気になって長文のメールを返してしまった。
米国の後追いということで一々驚いていても仕方ないが、スポーツだけ妙な形で米国のまねをしているのが、昔から気になっている。米国生まれのスポーツのうち、野球だけが突出して日本で人気球技になった不思議さについてだ。米国で最も人気のある球技というなら野球に限らない。アメリカンフットボールやバスケットボールも野球と同等かそれ以上の人気がある球技だ。そもそも米国ではスポーツにシーズンというのがあって、一人の人間が1年中同じスポーツしかやらないということはない。春になると野球やテニスをやり、秋、初冬になるとバスケットやアメリカンフットボール、アイスホッケーに移る。マイケル・ジョーダンも高校まではバスケット、野球両方で活躍していたし、大リーグの野手として活躍した後、NBA(米バスケットボール協会)のボストンセルティックスで活躍した選手もいる。大リーグとアメリカンフットボールリーグ双方からドラフト指名された大学のスター選手もいた…。
なんてさほどのことでもない知識を振りまいた後で、ではなぜ、米国人が好む球技のうちで野球にだけ日本人が引きつけられたか、という自説も披歴した。野球は基本的に1対1、投手と打者の勝負ではないか。団体球技とはいうものの、本質は1対1のスポーツ。剣道、柔道、相撲といった格闘技が好きで、よく理解できる日本人にぴったりだった。そもそも日本から生まれた団体球技など一つもないことを見ても、野球以外の団体球技が持つ多様な面白さ、魅力を元来が理解しにくい国民性だと言えないだろうか…。
2年前の編集だよりでは、新興のプロバスケットリーグであるbjリーグの会場運営が、伝統ある日本バスケットボールリーグのはるかに上を行くものであることと、試合自体もよほど見ごたえがあることを強調した。理由は簡単で外国人選手の出場人数を限定している日本バスケットボールリーグは、ガラパゴス化してしまっている。日本でしか通用しないスタイルから脱することができず、外国人の方が多いbjリーグの方が世界に通じるプレー、試合運びをしていたからだ。
最近、日本バスケットボールリーグとbjリーグが統合するというニュースが流れたが、もうちょっとbjリーグに我慢してほしかった、と思うバスケットファンはいないだろうか。一緒になってしまったら、水は低きに流れるというのは目に見えているだろうに。