大昔はどうか知らないが、ショートパンツや半ズボン姿で通学したいと思う男の中学生や高校生は珍しいだろう。編集者の経験でいうと中学の時からバスケットボールのショートパンツもわざわざ長いのを買ってはいていた。いまはプロも社会人も学生も皆ひざが隠れるくらいの長い“ショートパンツ”を重用しているが、昔はバスケット選手のショートパンツといえば、水泳選手のパンツに近いくらい短かった。最も水泳選手も最近は体全体を覆うような水着の方がよいということが話題になっている。だが、これは見た目がどうこうといった理由とは違う。
高校3年の春、関東大会で東京の代表校に敗れたとき考えた。東京勢のユニホームは、ショートパンツがトランクス型それもカラーが普通になっている。白くて長さも短い、いかにも質素なパンツが当たり前の茨城県の高校生とは見栄えからして違う。泣いても笑ってもこれが終わりという夏のインタハイ予選に向けて、身なりから代えることを思い立った。チームメートと夜、関東大会が行われた高崎の町に出かけ、皆でトランクス型のパンツを買い求めた。色もブルーに統一した。
インタハイ県予選大会、県内ではただ1校だったカラーのトランクス型ショートパンツがどの程度、対戦相手に“精神的圧力”となったかどうかは、分からない。しかし、「強く見える」とコーチや先輩たちの評判はすこぶるよかった。インタハイ出場を最後にわれわれ3年生が現役を退いた後、下級生たちはすぐに先輩たちの寄付金で正式なブルーのトランクス型ユニホームを作ってもらったから。それどころか、ほかの高校も右へならえとなったのが愉快だった。われわれの1年下から、茨城県の高校生たちのバスケットボール・ユニホームは、トランクス型のショートパンツが常識になってしまったのである。
前置きが長くなったが、昔、通信社の同遼記者と「若い女性はどうして短いスカートをはきたがるのか」という話になったことがある。「自分の容姿に自信が持てる時期は短い、という思いが男より女性の方が強いのだ。だから見栄えが良いときに自分の肌を見せたい、となるわけ」。同僚の解説にすっかり感心したことを思い出す。科学的な裏付けとなるとどの程度のものか、いまだに分からないが。
ところで、ヒトが頭など一部をのぞいて皮膚を覆う体毛をなくしたのはいつごろからだろう。ヒトのような体表を持つ類人猿やサルがいるなどという話は聞いたことがないから、進化過程のある時点でヒトは毛がなくなったのだろう。実験動物として有名なヌードマウスというのは、ヒトのように皮膚が露出しているが、もともと突然変異で生まれたそうだ。ヌードマウスと正常なマウスと遺伝子の違いを調べ、類人猿とヒトとの遺伝子の違いと比較してみることで、ヒトがいつごろ、なぜほとんどの体毛を失ったか、突き止められないものだろうか。あるいは既に分かっているのだろうか。
16日夜、浅草・観音裏のスナックで開かれた懇親会に招かれた。参加者は、茨城県東京事務所の歴代所長、次長が主体の10数人で、主催者はこれらの人々をずっと支援してきた人一倍郷土愛が強い高校の大先輩である。「川向こうから取り寄せた」というボリュームたっぷりの弁当に舌鼓を打ちながら談笑しているうちに、「御神輿が来ましたよ」というママの声。ゾロゾロと皆で店の前に出てみると柳通りを町内会の御輿が通るところだった。三社祭の初日だったのだ。「なるほど、それでこの日この場所で会合を設定したのか」。初めて気づいた。
御輿の担ぎ手の足の運びが、独特だ。掛け声は威勢がよいのに、柔らかい。もうひとつの発見は、担ぎ手の衣装が短いこと。ふんどし姿の下半身をようやく覆う程度である。
短いスカートをはきたがるのは、女性特有の欲求とは言えないかも。昔、同僚と交わした会話を思い出した。