日本のバスケットボール界に対して偉そうなことをいえる立場でもないし、情報もない。ただ、日本では当分メジャーになれないスポーツ集団という印象が抜けないでいる。競技人口でいえばトップクラスのスポーツなのに、と考えると何とも寂しい。
4連休の初日というのに朝から雨だ。さてどうしたものか。スポーツ面に、バスケットボールのbjリーグプレーオフが有明コロシウムであると書いてあるのを見つけた。日経新聞のスポーツ面(4月22日朝刊)に載っていた池田弘・bjリーグ・アルビレックス新潟会長のコラムを思い出す。発足して3年にしかならないbjリーグが、日本を代表すると自認する日本バスケットボールリーグ(JBL)を人気の面で完全に追い抜いたことが、はっきりと分かる記事だった。
いつまでたってもファン二の次、企業依存体質から抜け出せない。そんな日本のバスケット界に愛想を尽かし、敢然とプロリーグを立ち上げた。先々の展望に不安を抱えながら…。bjリーグについては、その程度の印象しか持っていなかった。しかし、日経に載った池田会長の文章は「待てよ、これは本物ではないか」と思わせるのに十分な説得力がある。実は、日本のバスケットボールの頂点にいると自認している日本バスケットボールリーグ(JBL)については、ずーっと魅力を感じることができなかった。毎年、リーグ上位チームの争いになる正月の全日本総合選手権を何年か続けて見たが、はっきり言って興奮する思いを味わった記憶がない。一緒に行われる女子の試合の方が、よほど面白いと思う。
初めて観たbjリーグのプレイオフ準決勝2試合を見て、長年の不満、疑念の一端が解ける思いだった。
試合会場について、当日チケット売り場に並ぶ。短い列なのに、なかなか窓口までたどり着かない。ようやく自分の番に来て分かった。指定席、自由席、チケット交換窓口が3にあるのにチケットを管理している役が一人しかいないのである。窓口役が客の希望を丁寧に聞いて、このチケット渡し役と相談してようやく発券、という作業になるので時間がかかるのは当然だ。しかし、怒る気にはなれなかった。チケット売り場の人々の雰囲気が、明らかに客に親切に見えたからだ。日ごろあちこちでマニュアル型の受けごたえしかしない窓口役、接客係を見慣れているためだろう。
そもそもこんな悠長な当日売りチケットの対応で支障が生じないというのは、前売り券による入場者、つまり固定ファンが非常に多い証拠だ。会場に入ってチケットをよく見て気づいた。指定席は、1試合だけに有効で、同じ日の別の試合は自由席で観戦となっている。これまでバスケットに限らずテニスなど1日に複数の試合がある大会を観戦したことは何度もあるが、入れ替え制の指定席チケットというのは初めてだ。よい席で見たい試合は、ファンによって変わるだろうから、限られた席の有効活用という観点からもjbリーグの指定席チケット扱いの方が、観客本位といえそうだ。主催者側も、指定席料金収入が増えるし、その結果、自由席券の料金を少しでも低く抑えられるなら自由席で見たい家族客など喜ぶファンも多いのではないだろうか。
さて、既存の男子バスケットの試合と、この日観たbjリーグの試合はどこが違うかである。外国人選手の数を制限しているのと、国籍を問わないbjリーグの差が決定的だったと思う。遠方からのシュートが見事に決まる。これがバスケットの魅力のひとつだ。が、外からのシュートの入れ合いに終始する試合は単調で面白くない。外からのシュートというのは半分以上入らないわけだから、このこぼれ球を奪い合うゴール下の攻防の方が激しく、見ごたえがある。日本のバスケットの試合の問題は、ここが見劣りすることではないか。
2メートル前後の身長があり、走るスピードとジャンプ力とも一流の選手は海外では珍しくないが、日本人ではまだ数えるほどだろう。外国人選手が主体のbjリーグの試合が、これまで見慣れている国内の試合とはボールを奪い合うスピード、パワーともまるで異なるものだったのは当然ともいえる。
身もふたもない話になってしまうが、日本人だけでチームを構成している限り、運動能力から言って、最も世界の一流レベルから遠い球技はバスケットではないだろうか。日本バスケットボールリーグ(JBL)や全日本総合バスケットボール選手権大会のように外国人選手の数を制限している試合をいくら重ねても、日本のバスケットが国際レベルに達するのは至難の業のように思える。オリンピックで日本人選手が短距離競走や跳躍競技でメダルを取るのと同じくらい難しいことではないだろうか。
国技大相撲があれほど国際化している時代である。バスケットボールの新興勢力と既存勢力のどちらがまともな道を進んでいるといえるだろう。観戦後、コロシウムを出て、勝負は既についているという感をあらためて強くした。楽しそうに帰途につく家族連れの観客が非常に多かった。