テレビをさっぱり見なくなったからなあ。天王洲銀河劇場で「中村JAPANドラマティックカンパニー」の旗揚げ公演「マッスルピック−筋肉の祭典2幕5景−」を見て、あらためて感じた。こんな舞台、演劇ジャンルがあるのかと仰天したが、後で何年も前からテレビや公演で人気を集めていると知る。
開演前に、この劇団の主宰者で、構成・演出・振り付けを担当した中村龍史氏があいさつした。「『マッスルミュージカル』のプロデューサーと意見が合わなくなったので、新しい劇団を立ち上げた。志の高い人間がついてきてくれた。日本中を元気にする劇団を目指す」
「マッスルミュージカル」というのが、この演劇ジャンルのパイオニアというべき人気劇団である。「マッスルミュージカル」の最初の公演(2001年)以来、昨年夏の公演まですべての構成、演出、振り付けを手がけてきたという中村氏が、なぜ「マッスルミュージカル」と袂(たもと)を分かつことになったのか。大掛かりな機械仕掛けで観客の関心を引こうとするプロデューサーと意見が合わなくなったため、という。
「人を感動させるのは、機械でなく人」。そんな最初の精神に戻って、人の体の動き、筋肉で勝負する劇団を旗揚げした、ということらしい。
劇団の中心メンバーは、「マッスルミュージカル」から移った男女のようで、パンフレットをみると体操、新体操、空手などで相当な実績を持つ人たちが並んでいる。休む間もなく次々に激しい動きが出てくるのに、見苦しいほどの汗をかいている人間が見当たらないのにも感服する。逆立ち、宙返りまるで駄目、跳び箱を跳び越すことすらおぼつかなかった人間から見ると、信じがたい筋力、体の柔らかさとしか言いようがない。下駄を両手に“はいて”、逆立ちのタップダンス、という笑いを誘うようなパフォーマンスもあった。演じている人間は大変だろうが…。
小中高生の平均的な基礎体力は、この20年間、低下する傾向が続いているという(文部科学省「平成18年度体力・運動能力調査」の概要 参照)。
平均基礎体力が下がっているということはどういうことなのだろう。昔の小中高生より体力が優れている人間は相当いる。しかし、子ども時代から外遊びをろくにしないため、筋力がなまってしまっている小中高生が余りに増えた結果、平均値を引き下げてしまっているということなのだろうか。
休む間もなく目を見張るような演技を続ける多数の若い男女に感動するとともに、若者たちの運動能力にも格差拡大が起きていないものか、と少々、気になった。
どんな時代にも体力抜群の人間はいた、といってしまえばすむ話かもしれないが…。