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日本の大学も早晩、環境対策が評価対象に?

2008.04.03

 3日の日経新聞朝刊企業面の記事「本番・京都議定書−問われる実行力」(上)に、最近、国際的株価指数の構成銘柄から旭硝子の名前が消えた事実が紹介されている。理由は、「(構成銘柄の)選定基準に温暖化ガス排出削減の具体的な目標設定などを追加した結果」とある。生産高当たりの排出量といったあいまいな削減では、世界に通用しなくなっている例として紹介されている。

 ここで引用されている国際的株価指数とは「FTSE4Good」というもので、英国のFTSEが社会的責任投資向けに開発した、としか書かれていない。日経の企業欄読者なら、説明など不要な指数ということだろう。

 ウェブサイトで調べてみると、FTSEというのは、英国の経済紙フィナンシャルタイムズとロンドン証券取引所の合弁会社だ。欧州を代表する株価指数の発信元である。

 「FTSE4Good」というのはFTSE株価指数の一つで、この構成銘柄に選ばれるということは、社会的責任に関する取り組みが基準を満たした企業と認められたことを意味する。社会的責任を果たしているかは、環境保全に対する取り組み、ステークホルダーとの建設的関係の構築、人権擁護の取り組みという3つの観点から判断される。旭硝子は、環境保全の温暖化ガス排出削減取り組みで引っかかったということのようだ。

 ここであらためて明らかにされていることは、欧州社会が企業に社会的責任の遵守を厳しく求めていることと、日本企業もまた社会的責任について国際的な要求を満たさない限り、生き残れない時代になっているということだろう。

 では、大学はどうか。当サイトに毎月、掲載されている英国在住のフリーランス・コンサルタント、山田直 氏の報告「英国大学事情」が、最新号で英国の大学をめぐる興味深い動きを伝えている。

 英国最大規模の大学・カレッジ学生ネットワークである「People & Planet」が、英国の約120の大学の環境対策データを収集し、そのランキング結果を2007年に初めて「People & Planet Green League 2007として公表した、というのだ。

 「環境政策を公表しているか」「包括的環境監査が行われているか」といった基本的な取り組みから、「再生可能なエネルギー利用率」「廃棄物のリサイクル率」「一人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量」といった数値で示せる具体的取り組みの成果まで、数項目の評価を総合して点数を付けている。

 例えば、ケンブリッジ大学は、再生可能エネルギー利用率が22%、廃棄物リサイクル率29%、一人当たりの二酸化炭素排出量2,349キロなどとなっており、50点満点の40点、ランクは7位と評価されている。

 「英国の大学における初めての環境対策ランキングであったため、関係者に大きな反響を与えた。今後、大学の総合ランキングに環境対策も評価項目に入ってくるであろう」

 山田 氏はこのようなコメントを付記している。

 大学の評価は、研究論文の質量、研究成果の社会還元、知財活動、競争的研究資金の獲得実績といった研究活動を判断するデータに重点が置かれ、教育活動や地域への貢献などがこれに加味されている、というのが現状だろう。しかし、これからは社会的責任をどれだけ果たしているかがより厳しく問われることになる。環境保全に対する取り組み実績も早晩、大学の総合評価の重要な判断材料に付け加わる、ということだろうか。

 山田直 氏「英国大学事情2008年第4号「大学のエコ・キャンパス促進活動」

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