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『元素戦略』は志持つ若者に火を付けられるか

掲載日:2010年12月7日

志を持つ日本の若者に火を付けられるのは「元素戦略」だけ―。国際的に最も著名な日本人研究者の1人、細野秀雄 氏・東京工業大学フロンティア研究機構教授が6日、都内で開かれたシンポジウム「世界を魅せる日本の課題解決型基礎研究~JST目利き制度とその可能性」(科学技術振興機構主催)で力説した。

細野氏はまず、1986年の酸化物高温超電導物質の発見に端を発し、瞬く間に世界中を沸き立たせた超電導研究を挙げ、これほど多くの研究者を育てた例はない、と指摘した。その上で、日本の材料研究が今世界一となったのも、先輩後輩もないような超電導研究競争が世界中で展開されたため。しかし日本の現状は相当、心配な状況にある。今、必要なことは志を持つ若者に火を付けること。そのためには、世の中に明快に役に立つというメッセージを持つものでないと駄目。それは「元素戦略」だ、と提言した。

氏によると、これから必要なことはリサイクルなどでは済まず、材料に関するブレークスルー。元素(そのものの性質)を超えた機能設計を可能にする新しい物質感をつくり出す新物質・材料科学が求められている。それは当面、日本のためになることだが、やがては人類全体に貢献するものだ、という。

細野氏は、国際学術情報会社トムソン・ロイターの調査で2008年に世界で最も被引用回数が多かった鉄系高温超電導体の研究を主導した研究者として知られる。これ以外にも、石灰とアルミナというありふれた物質の化合物(セメント材料)が電気を通す透明な金属になり、さらに超電導材料にもなることを発見するなど、国際的に知られる研究成果は数多い。「新超電導および関連機能物質の探索と産業用超電導線材の応用」は、昨年度からスタートした最先端研究開発支援プログラムで総額1,000億円が投入される30課題の中の一つに選ばれている。

理科、数学の基礎学力低下、工学部への志望者減、ポスドクの就職難。科学技術立国を標榜するには暗い話題の方が目立つが、果たして細野氏の提案は特効薬あるいは有効な処方せんとなるだろうか。

「使命感に加え、野心を持つ若者のマインドをつかむのにこれほど適した目標はない」と氏は強調している。

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