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セメントを透明な金属にする夢さらに前進

2010.09.27

 液晶ディスプレイなどに欠かせない透明な金属の代わりになり得ると期待されているセメントに似た化合物(12CaO・7Al2O3)が、金属のように電気をよく通す理由を東北大学と東京工業大学の研究チームが解明した。

 石灰とアルミナというありふれた物質の化合物である12CaO・7Al2O3が電気を通しかつ透明な金属になり、さらに超電導材料にもなることを細野秀雄・東京工業大学教授らが2002年から07年にかけて発見、国内外で大きな関心を呼んだ。細野教授らによる世界の研究者の常識を覆す成果は、0.5ナノメートル(ナノは10億分の1)という微細な「カゴ」の中に、特別な工夫によって多数の電子を入れることで実現した。

 今回、細野教授と東北大学原子分子材料科学高等研究機構の相馬清吾助教、高橋隆教授らは、光電子分光という手法により結晶の外に抜き出した電子のエネルギー状態を調べ、12CaO・7Al2O3の「カゴ内電子」の直接観測に初めて成功した。これにより、セメントと同様の化合物が透明な金属さらには超電導体となるメカニズムが、予測されていた通り「カゴ内電子」によることを確認した。

 透明な金属は液晶ディスプレイやテレビなどに欠かせない材料だが、現在は海外から輸入しているインジウムという希少金属に頼っている。細野教授らのこれまでの研究成果は、ありふれた元素から成る材料でもナノ・テクにより新しい機能を発現できる可能性を示したとして、昨年スタートした最先端研究開発支援プログラム30課題の一つに選ばれている。

 今回の金属化メカニズムの解明により、12CaO・7Al2O3をモデルケースとした新材料開発がさらに進展していくことが期待できる、と研究チームは言っている。

 今回の成果は、最先端研究開発支援プログラム「新超電導および関連機能物質の探索と産業用超電導線材の応用」(中心研究者:細野秀雄教授)と、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「物質現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」研究領域(研究総括:田中通義 東北大学 名誉教授)の研究課題「バルク敏感スピン分解超高分解能光電子分光装置の開発」(研究代表者:高橋隆教授)によって得られた。

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