文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が、日本を含めた世界主要国の科学技術活動を体系的に分析した「科学技術指標」の2021年版を公表した。主な指標のうち、日本の1年当たりの論文数は世界4位で昨年調査と同位だった。しかし、注目度の高い論文数では昨年の9位から10位に順位を落とし、日本の研究活動の国際的地位向上が喫緊の重要課題であることを改めて示した。中国は1年当たり論文数、注目度が高い論文数ともに世界1位だった。一方、複数国への特許出願数で、日本は昨年同様トップを維持した。
NISTEPは科学技術指標の1つとして、2017〜19年の調査対象期間に科学誌に掲載された自然科学の論文を分析した。論文は国際共著が多いため、国ごとの論文への貢献度を加味して本数を修正した(分数カウント法)。
1年当たりの論文数は、中国が約35万3200本、シェア21.8%で、昨年の調査と同様に、米国の約28万5700本、17.6%を抑えて世界1位だった。3、4位も昨年調査と変わらず、3位はドイツで約6万8100本、4.2%、4位が日本の約6万5700本、4.1%だった。
他の論文に多く引用される「注目度の高い論文」の「Top10パーセント補正論文数」でみると、1位は中国の約4万200本で、シェア24.8%。昨年1位だった米国の約3万7100本、22.9%を抜いて初めてトップに立った。米中両国で半分近いシェアを占めているのが目立つ。日本は約3800本、2.3%で、インドに抜かれて昨年の9位から10位に後退した。
「注目度の高い論文」は世界の中でその国の研究成果レベルを判断する1つの目安とされる。日本は、20年前は4位、10年前は5位で低下傾向は顕著になっている。国の科学水準は論文だけでは評価、断定できないが、残念ながら、論文に関する指標からは今回も世界の中での日本の存在感を示すことはできなかった。
また、研究開発費(OECD推計)では、日本は円換算で2019年は18.0兆円。対前年比0.2%増でほぼ横ばいだった。68.0兆円の米国、54.5兆円の中国に次いで昨年同様3位を維持したが、米国、中国と比べると大差が付いた。中国は対前年比12.8%増で、主要国中最も伸びている。
研究者数の比較では、日本は68.2万人(2020年)で、1位の中国、2位の米国に次いで昨年同様3位だった。研究開発費同様、研究者数でも210.9万人(2019年)の中国、155.5万人(2018年)の米国に大きく差を付けられている。
一方、特許出願に着目し、各国・地域から生まれる発明数の国際比較をした「2カ国以上への特許出願数(パテントファミリー数)」(2014〜16年)では、日本は約6万2000件、シェア26.0%で、10年前同様に米国とドイツを上回ってトップを維持している。
特許出願数を技術分野ごとに見ると、日本は電気工学、一般機器が、米国はバイオテクノロジーの医療機器・医薬品が、中国は情報通信技術、電気工学のシェアが高い。
関連リンク
- NISTEP「「科学技術指標2021(調査資料-311)」及び「科学研究のベンチマーキング2021(調査資料-312)」の結果公表について」