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「エスキモー星雲」など天体の通称、NASAが見直し表明

2020.08.14

 天体の中には、その特徴ある形などから「馬頭星雲」「かに星雲」といった親しみやすい通称が定着しているものがある。これらのうち差別的などと考えられるものを見直す方針を、米航空宇宙局(NASA)が明らかにした。国際的な取り決めではないが、追従する動きが強まりそうだ。最初の取り組みの一つとして、惑星状星雲NGC2392を「エスキモー星雲」と呼ぶのを止める。

惑星状星雲NGC2392(NASA提供)
惑星状星雲NGC2392(NASA提供)

 NASAは一部の天体の通称について、「科学界が差別や不平等に対処しようと努める中で、無神経であるばかりか有害であることが明らかになってきた」と指摘。多様性や公正、共生などの観点から再検討することを5日、公式サイトで表明した。

 NGC2392はふたご座にあり、太陽のような恒星が終末に外側のガス層を排出してできた残骸だ。1787年に発見され、毛皮のフードをかぶった顔にみえることからエスキモー星雲と呼ばれるようになった。NASAは「エスキモーは北極地方の先住民に押しつけられた人種差別的な歴史を持つ植民地支配的な用語だと、広く考えられている」と指摘し、「もうエスキモー星雲とは呼ばない」とした。通称が不適切と判断した場合、その後はNGC2392など、国際天文学連合の公式名を使っていくという。

 おとめ座で衝突を続ける2つの銀河、NGC4567とNGC4568を合わせて「シャム双生児銀河」と呼ぶのも同様にやめる。有名な結合双生児がシャム(タイの旧名)出身だったことからこう呼んでいたという。チョウのように見えることから「バタフライ銀河」とも呼ばれており、これなら問題ないとみられる。

衝突する銀河NGC4568(左)とNGC4567(国立天文台提供)
衝突する銀河NGC4568(左)とNGC4567(国立天文台提供)

 NASA科学ミッション本部のトーマス・ザーブチェン副本部長は「全ての名前を、多様性と共生というわれわれの価値観と一致させるのが目標だ。科学界と積極的に協力する。科学は全ての人のためのものだという価値を、あらゆる仕事に反映しなければならない」とした。

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