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ブラックホールが謎の天体と衝突 米欧、重力波で観測

2020.07.10

 ブラックホールと正体不明の天体の衝突を重力波観測施設で捉えた、と米欧の研究グループが発表した。不明の天体は観測史上最軽量のブラックホール、または最重量の中性子星の可能性があるという。

ブラックホールと正体不明の天体が衝突したことを示す概念図(LIGO、米カリフォルニア工科大学、米マサチューセッツ工科大学、R.ハート氏提供)
ブラックホールと正体不明の天体が衝突したことを示す概念図(LIGO、米カリフォルニア工科大学、米マサチューセッツ工科大学、R.ハート氏提供)

 米国の2カ所の観測施設「LIGO(ライゴ)」と欧州の施設「VIRGO(バーゴ)」のグループはそれぞれ昨年8月14日、地球から約8億光年離れた場所から届いた重力波を検出した。両グループの報告によると、この重力波は2つの天体の衝突によって生じ、一方は太陽の質量の約23倍のブラックホール、もう一方は同約2.6倍の天体。衝突の結果、同約25倍の質量のブラックホールができ、質量の一部は重力波となって宇宙に拡散した。

 太陽の8倍以上の質量の恒星は一生の最後に大爆発を起こす。その後、比較的大きい星だと自らの重力で崩壊し、巨大な重力のために光さえ脱出できない天体、ブラックホールとなる。小さい星だと、原子核を構成する粒子の一種である中性子を主成分とする天体、中性子星となる。両者の中間にあたる太陽の質量の2.5?5倍の天体はこれまで観測されておらず、研究者は「質量のギャップ」と呼んでいる。今回捉えた天体はこの境界域に存在し、正体不明ということになる。

 LIGOグループのビッキー・カロゲラ米ノースウエスタン大学教授は「最も重い中性子星なのか、最も軽いブラックホールなのかは分からないが、いずれにせよ記録更新だ」と述べている。パトリック・ブレーディー米ウィスコンシン大学ミルウォーキー校教授は「中性子星やブラックホールに関する議論に影響を与えるだろう。観測能力の限界が原因かもしれず、さらに時間をかけ、観測を続ける必要がある」とする。

 重力波は、質量を持つ物体の存在による時空のゆがみが、物体の運動により周囲に光速で伝わっていく。アインシュタインの一般相対性理論に基づいて提唱され、2015年にLIGOが初めて検出に成功した。初観測の業績に対して、2017年のノーベル物理学賞が授与された。

 宇宙から届く重力波を観測する「重力波天文学」により、光や電波、X線などの電磁波による観測では掴めなかった現象を捉え、天文学や宇宙物理学の発展につながると期待される。米欧に続き日本も岐阜県飛騨市に大型の重力波観測施設「KAGRA(かぐら)」を建設し、今年2月に本格観測を開始している。

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