20カ国・地域(G20)首脳会合で国連持続可能な開発目標(SDGs)など地球規模課題で協調を—世界のシンクタンクや研究機関の関係者で構成する「T20」が26、27日の両日東京都内で会合を開催した。27日は来月大阪市で開かれるG20首脳会合に向けた共同声明を発表、声明文書は河野太郎外相に手渡された。声明は、世界で進む格差拡大や保護主義の台頭など世界的な構造変化に危機感を表明し、地球規模課題解決に向けG20に強い指導力を求めている。
共同声明は10の特別作業グループ(タスクフォース)に分かれた専門家による研究と分析を通じて作成された。声明本文のほか、10項目にわたる多くの提言で構成されている。声明本文は、「格差拡大などグローバリゼーションの負の側面への対処や貧困削減、気候変動への対応など多くの課題が未解決」と強調。加えて現在は、デジタルイノベーションの活用に伴う労働市場へのリスクや人口高齢化、移民問題、保護主義の台頭といった世界的な構造変化をもたらすさまざまな課題を抱えている、とした。
そして、こうした多くの課題に対処するためには、共通のビジョンを策定、共有することが喫緊の課題、とした上でG20の指導力は極めて重要だ、と指摘している。
また提言のうち、SDGs関連項目では「発展途上国が技術的・財政的能力を得るために(各国は)科学、技術とイノベーションで協力する(代替)メカニズムを構築すべき」、気候変動の項目では「適切なテクノロジーや地域社会に根差した再生可能プロジェクトを通じ、脱炭素社会を構築すべき」などとした。
このほか、デジタル時代の項目では「デジタルリテラシーをはじめとする未来型のスキル向上を促進すべき」と指摘。高齢化人口の項目では、高齢化社会到来は多くの国に共通する大きな問題との共通認識の下、各国の人口動態変化の影響に関するデータや政策を共有する仕組みの整備を求めている。
T20のTはシンクタンク(THINK TANK)の頭文字。今回の会合はアジア開発銀行研究所(ADBI)、日本国際問題研究所(JIIA)、国際通貨問題研究所(IIMA)の3つの国内主要シンクタンクが共催し、G20だけでなく世界の約50カ国から約500人が参加した。
26日は安倍晋三首相がビデオ映像を寄せ、「G20首脳会合では国際社会が直面する課題について、各国が団結して対処するというメッセージを発信したい」などと語った。また「T20はG20の重要なエンゲージグループの1つだ」と述べ、T20の議論に期待を寄せた。27日の閉会セッションで共同声明を手渡された河野外相はあいさつの中で「私たちが持続可能な、インクルーシブ(包摂的)な、強靱な社会をつくらなければならないことは疑う余地がない。そのためにどうしたらよいかが大きな問題だが、T20はこれらの問題を議論し声明をまとめてくれた。G20首脳会合にこの声明を持参(し反映)したい」などと述べた。
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