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日米の大学がデジタル分野で国際協力 16大学が合意し、ワークショップ開催

2018.03.22

 日本と米国の大学が国際協力し、人工知能(AI)やデータ科学、サイバーセキュリティといったデジタル分野での共同研究や、デジタル時代に重要な教育プログラムの開発などを精力的に進めることになった。日米各8大学の計16大学の代表らが3月19日に東京都内に集まり、具体的な成果を目指して国際協力を推進するプラットフォーム(ハブ)をつくることで合意した。これに合わせて19、20日の両日、筑波大学東京キャンパス文京校舎(東京都文京区大塚)で「日米デジタルイノベーションハブ・ワークショップ」が開かれ、関係者のほか一般の人も含めて約200人が参加した。

 今回プラットフォームの構築で合意したのは、日本側が東北大学、筑波大学、早稲田大学、慶應義塾大学、名古屋大学、大阪大学、広島大学、九州大学。米国側がオハイオ州立大学、ケース・ウエスタン・リザーブ大学、メリーランド大学ボルチモア校、ワシントン大学セントルイス校、ノース・カロライナ州立大学、アリゾナ州立大学、ジョンズ・ホプキンス大学、デラウエア大学。当面、筑波大学とアリゾナ州立大学が幹事大学となり、デジタル分野の中でも具体的にどの研究領域での協力がより効果的か、を知るための技術分野地図を作成する。またどのように産業界に働きかけて連携を進めるか、なども検討する。参加大学は今回合意した16大学に限定せず、デジタル分野研究を重視している両国の大学に幅広く参加を呼びかけるという。次回会合は、夏ごろをめどに米国ワシントンで開かれる予定。

 「日米デジタルイノベーションハブ・ワークショップ」は、プラットフォーム構築を日本側で支援する科学技術振興機構(JST)と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催し、総務、外務、文部科学、経済産業の4省が後援した。一般公開された20日は午前9時半に開会。JSTの濵口道成理事長とNEDOの古川一夫理事長が主催者を代表してあいさつし、両理事長とも、AIが社会や生活のあり方に大きな影響を与えるデジタル時代を迎えた中で、デジタルイノベーションで世界をリードする米国と日本の大学が国際協力研究を進めることの意義や重要性を強調した。

 また、同日午前から午後にかけて福田康夫元首相やジョセフ・ヤング駐日首席公使、武田修三郎・武田アンド・アソシエイツ代表(理化学研究所経営顧問、元文部科学省参与)らがデジタル時代の重要課題を俯瞰(ふかん)する特別講演をした。また、松岡聡・理化学研究所特任顧問や辻井潤一産業技術総合研究所人工知能研究センター・センター長らによるデジタル分野での具体的な研究課題や研究体制などを紹介する基調講演も行われた。

 このほか、午後には「AIとデータアナリシス分野での産学連携」「AIとサイバートラスト」「デジタル時代の教育」の3テーマのパネルディスカッションが同時進行した。いずれのディスカッションでも、大学や研究機関がAIやデータ科学、サイバーセキュリティなどの研究で抱える具体的課題について熱心な情報交換や意見交換が行われ、個別分野を問わず国際協力や人材教育が重要である、との認識で一致した。

 ワークショップ終了後、NEDOの宮本昭彦・副理事長、筑波大学の櫻井鉄也・人工知能科学センター長、名古屋大学の武田一哉・総長補佐、JSTの白木澤佳子理事が記者会見した。プログラム委員長を務めた櫻井センター長は「米国関係者は日米大学のこうした国際協力にたいへん熱心だった。米国もイノベーションを進める上で(日本など)海外との意見交換の重要性を感じているようだ。日本側も同じ(認識)なので、この活動をしっかり進めていきたい」。武田総長補佐は「産学連携のディスカスションに出たが、ジョンズ・ホプキンス大学がデータ科学の拠点になっていった経緯や、産学連携を技術だけでなく、人文系の研究者も含めて進めたアリゾナ州立大学の例など、米国の具体的な実例が聞けて大変勉強になった」とそれぞれ述べた。

 プラットフォームづくり支援の役割を担う立場のNEDOの宮本昭彦・副理事長は「われわれが持っている海外のネットワークや諸外国とのネットワークがあるシンクタンク機能などを使って支援していきたい」。またJSTの白木澤理事は「政府全体が省庁の枠を超えてAI分野に力を入れている。そうした中で基礎研究から実用化に至る幅広い分野について日米共同の研究の場づくりを支援したいということで今回のワークショップを主催した。今後も支援を深めていきたい。また(例えば)AI分野では理化学研究所とプロジェクトを進めているが、こうしたプロジェクトを(プラットフォームと関連付けて)新しい形で取り組めないか、検討したい」とそれぞれ語った。

 このほか日本側の多くの関係者は、2日間のワークショップを通じた情報、意見交換がプラットフォームの貴重な第一歩となった、との感想を述べていた。

写真 記者会見する左からNEDOの宮本昭彦・副理事長、筑波大学の櫻井鉄也・人工知能科学センター長、名古屋大学の武田一哉・総長補佐、JSTの白木澤佳子理事
写真 記者会見する左からNEDOの宮本昭彦・副理事長、筑波大学の櫻井鉄也・人工知能科学センター長、名古屋大学の武田一哉・総長補佐、JSTの白木澤佳子理事

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