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産業創造、社会変革重視 第5期科学技術基本計画中間とりまとめ

2015.06.01

中村直樹

 第5期科学技術基本計画に向けた中間とりまとめを、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の基本計画専門調査会がまとめた。

 中間とりまとめでは、例えば女性研究者3割などといった具体的な数値目標は盛り込まず、現状の認識と課題、取り組むべき方向性を示すものとなった。これはCSTIが毎年、政策の重点方針を示す総合戦略を充実させ、そちらで具体的な数値目標などを盛り込むようにしたためだ。ただし、基本計画としてのPDCAサイクル(事業活動の「計画」「実施」「監視」「改善」サイクル)を回すためには、何らかの目標設定は必要になるため、さらに議論を重ね年末までに具体的な達成目標を盛り込むとしている。

 第4期計画では、課題対応型科学技術として、ライフイノベーション、グリーンイノベーションなどを柱にしていたが、第5期では、科学技術セクターだけでなく、産業界をはじめとする社会のステークホルダーとの連携・協力により政策を推進していくことを基本的な姿勢として打ち出した。

 その上で、核となる3本柱として、(1)わが国の科学技術がこれからの時代を先導していくべく、大変革時代を先取りする未来の産業創造と社会変革に向けた取り組み、(2)経済・社会的な課題の解決に向けて先手を打つ取り組み、(3)不確実な変化に対応できるよう、基盤的な力を徹底的に強化し、科学技術イノベーションの底力を引き上げていくための取り組み—について、それぞれに章を設けて書き込んでいる。

 これらを一体的、効果的に進めていくための仕掛けとして、人材、知、資金の好循環を誘導するイノベーションシステムの構築を取り上げている。その中では、大学改革と競争的資金改革の一体的推進や国立研究開発法人の機能強化・改革などに加え、安倍内閣の重要課題として位置づけられている「地方創生」に資する科学技術イノベーションの推進についても記載している。

 さらに、戦略的な国際展開、科学技術イノベーションと社会との関係、実効性ある科学技術イノベーション政策の推進の方向性を示している。

 これら中間とりまとめの記述を読むと、それぞれの項目について「強化を図る」「必要である」「課題を設定する」「重要である」「期待される」といった記述はあるものの、では具体的に何をどこまでやるのかは明記されていない。もちろん、基本的政策の方向性を示すものが基本計画であるという位置づけであれば、それでも良いのだろうが、これまでの基本計画と比べると抽象的な印象は否めない。

 一方、CSTIが現在検討中の「科学技術イノベーション総合戦略2015」基本計画を読むと、重点政策分野の取り組むべき課題を明らかにした上で、KPI(重要業績評価指標)が設定されている。10〜15年後のアウトカムを意識しつつ、バックキャストして5年程度後に実現すべき指標がそれぞれに設定されている。

 ただし、総合戦略は毎年改定するものであり、この指標も社会情勢の変化によって毎年変わる可能性がある。一方で基本計画のPDCAには、5年間の総括的な評価が必要であるため、総合戦略の評価指標をそのまま持ってくるのは難しい。CSTIでは今後も議論を重ね、年末までには具体的な達成度目標を設定するとしている。

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