採血せずに指に光を当てるだけで簡単に血糖値を測定できる技術を開発したと、量子科学技術研究開発機構(QST)の研究グループが18日に発表した。糖尿病患者は自分の血糖値を調べるためには針を刺して採血しなければならかなったが、この技術が実用化できれば手軽に調べられる測定器が実現するという。
研究グループは、QST量子ビーム科学研究部門関西光科学研究所量子生命科学研究部レーザー医療応用研究グループ(京都府)の山川考一(やまかわ こういち)グループリーダーらがメンバー。同グループによると、国内の糖尿病患者は720万人(国際糖尿病連合報告)。患者は採血型の自己血糖値センサーなどを用いて1日数回血糖値を測定しなくてはならない。しかし、指などを針で刺す煩わしさや苦痛、精神的ストレスを伴うほか、感染症の危険もあった。これまでも採血なしで血糖値を測る技術の開発が行われてきたが、これまでの技術では糖以外の血中成分などの影響を受けやすく、臨床応用に耐える精度を得ることはできなかった。
研究グループは、「高輝度中赤外レーザー」と呼ばれる波長6〜9マイクロメートルのレーザーを利用し、糖だけを正確に捉えることができる「非侵襲血糖値センサー」技術とこの技術を応用した試作品をそれぞれ開発した。試作品は精度も臨床機器に求められる基準を満たしたという。大きさは手のひらサイズで、患者は指をセンサーの中でレーザーを発するくぼみ型部分に置くだけで血糖値を測ることができる仕組みだ。
山川グループリーダーらは、この技術を実用化するためにQSTのベンチャー1号となる「ライトタッチテクノロジー株式会社」を既に設立。今後は試作品を改良して病院だけでなく家庭内でも使える手軽な血糖値センサーの普及を目指す。同リーダーらは「患者の生活の質(QOL)向上が期待できる」としている。
関連リンク
- 量子科学技術研究開発機構プレスリリース「採血が不要、非侵襲血糖値センサーの実用化に挑戦」