1回だけのごくわずかな採血で血液中のマイクロRNAをすぐ検出して、乳がんや大腸がんなど13種類のがんと認知症を早期発見する次世代診断システムの大規模な開発プロジェクトが始動した。2014〜18年度の5年間で79億円の予算をかける。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が6月11日発表した。
開発する新診断法はまったく新しい原理に基づく。がん細胞から血液中に流れ出している小胞のエクソソームに含まれるマイクロRNA(18〜25塩基ほどからなる短いリボ核酸)を高感度に検出する。13種類のがんと認知症に特徴的なマイクロRNAを組み合わせて、従来は見逃されていた各種がんや認知症を早期に発見する。
プロジェクトは、国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターが蓄積している膨大な臨床情報や血液サンプルを解析して、早期診断に使えるマイクロRNAを見つけ出す。5年後までには、医療現場での実用化を目指す。東レや東芝などの企業にも委託する。
NEDOは「各種のがんでそれぞれ5000症例以上の疫学データを基に、精度の高い新診断法を開発する。マイクロRNAによる早期診断は各国で注目されているが、より良い方法を日本で早く確立したい。来年度以降は、新設される日本医療研究開発機構に引き継ぐことも念頭に置いている。国を挙げての大きな事業になる」としている。
プロジェクトリーダーは、エクソソーム研究第一人者の落谷孝広(おちや たかひろ)国立がん研究センター分子細胞治療研究分野長が務める。落谷さんは「乳がんや大腸がんは研究が進んでおり、間違いなく実用化できる。13種類のうち、かなりのがんがこのマイクロRNAで早期診断できるだろう。多数の患者の血液データから、認知症やアルツハイマー病の診断法も実現したい」と意欲を見せている。