日本で最も高い建造物である東京スカイツリー(東京都墨田区)で、大気中の二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの観測を始めた、と国立環境研究所などの研究グループがこのほど発表した。同研究所は温室効果ガス排出実態の正確な把握や監視に威力を発揮するとしている。
この研究グループは国立環境研究所のほか、東京大学大気海洋研究所、気象研究所、産業技術総合研究所〔産総研〕の研究者で構成されている。国立環境研究所は昨年3月にスカイツリーの250メートル地点に大気観測スペースを整備して観測装置を設置。これまでにCO2、メタンの温室効果ガスのほか、一酸化炭素(CO)やCO2の炭素同位体比、大気中の酸素量の観測も始めた。
国立環境研究所は、スカイツリーでCO2、メタン、CO、酸素の濃度を分析しているほか、採取した大気を同研究所に持ち帰ってCO2の放射性炭素同位体比14CO2などの分析も行っている。COは地球表面からの赤外放射をほとんど吸収しないために温室効果ガスではないが、同ガスの濃度に影響する。
研究グループによると、CO2は都市のさまざまなところから排出されているが、CO2濃度と同時に放射性炭素同位体比を分析することでCO2が植物から出たものか、化石燃料が燃えてできたものか推定できる。また酸素濃度も分析することで燃えた燃料が天然ガスか石油かなども分かるという。
大都市で温室効果ガスと関連物質の大気観測はこれまで、フランス・パリや米国・インディアナポリス、ロサンゼルス、日本国内では東京・代々木など、世界的にも限られた場所でしか行われなかった。代々木では東海大学代々木キャンパス〔東京都渋谷区〕に観測装置が設置されている。2012年11月から防衛大学校と産総研が(大気・地表付近間の)CO2交換量を、16年3月からは産総研がCO2濃度と酸素濃度をそれぞれ観測している。また国立環境研究所は同じ場所で16年11月からCO2放射性炭素同位体比を、今年2月からはメタンや CO濃度の観測を始めていた。
研究グループは、地球温暖化対策を着実に進めるためには、こうした大都市圏での大気観測と「いぶき」(GOSAT)などの温室効果ガス観測衛星による観測の連携が重要で、スカイツリーでの観測開始は世界最大級の都市である東京圏のCO2排出実態の監視に威力を発揮する、としている。
東京スカイツリーは高さ634メートルの電波塔。東武鉄道が東京都墨田区の貨物操車場跡に建設し、2012年5月22日に開業した。運営会社は東武タワースカイツリー(本社・東京都墨田区)。展望台は350メートルと450メートルの2カ所にあり、観光名所になっているほか、首都圏の電波塔として、NHKと民放キー局5社などが利用している。
関連リンク
- 国立環境研究所プレスリリース「東京スカイツリー(R)で大気中二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス観測をはじめました」
- 電力中央研究所・雷研究関連サイト