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安全なiPS細胞を識別、不要細胞を除去 京大グループが手法開発

2016.09.12

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)が体の組織の細胞に変化する際に十分に変化(分化)しなかったiPS細胞を高い精度で効率的に識別し、除去できる手法を、京都大学iPS細胞研究所の斎藤博英(さいとう ひろひで)教授らの研究グループが開発した。再生医療の安全性を高める手法で、研究成果は9日付の英科学誌電子版に掲載された。

 iPS細胞は体の組織のさまざまな細胞に変化する能力があるため、現在再生医療や創薬研究が京都大学などの先端研究機関で盛んに進められている。しかし、iPS細胞が他の細胞に変化する際に変化しないままのiPS細胞が混じっていると、がん化する可能性がある、といった課題があった。

 斎藤教授らは、さまざまな種類の細胞がその種類に応じて固有に持つ「マイクロRNA」という微小物質に着目。この微小物質の働きを感知する「メッセンジャーRNA」を合成、これを細胞内に入れることにより十分に変化しきれていなかったiPS細胞を識別、除去する手法を開発した。

 研究グループは、この手法をiPS細胞から変化させた神経細胞に適用したところ、神経細胞の中でも神経細胞に完全に変化したものと十分変化できなかったものとを高い精度で分離できた。また今回開発した手法の効果を確認するためのマウスの実験を実施した。十分変化できなかったiPS細胞を除去した神経細胞をマウスの精巣に移植した結果、除去しなかった場合はできたがん化細胞(奇形腫)が、できないことを確認した。

 研究グループは「開発した手法によりiPS細胞を生きたまま安全性高く選択的に分離し(不要な細胞を)除去することができるようになったメリットは大きい」としている。

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