東北大学大学院理学研究科と海洋研究開発機構の共同研究グループはこのほど、北海道、東北から関東地方の沖合で、プレート(岩板)の境界面がゆっくり滑る「スロースリップ」が1〜6年周期で発生していることを発見した、と発表した。この現象が活発になった時期にマグニチュード(M)5以上の地震が発生する傾向があることも分かったことから、巨大地震の発生時期を推定する手がかりになる可能性がある、という。研究成果は米科学誌サイエンス電子版に掲載された。
スロースリップは、人間が感じる揺れを起こさずに、ゆっくりと断層がずれ動く現象で「ゆっくり滑り」とも呼ばれる。プレートの沈み込みに伴って起きるが、プレート同士がくっついたままの領域はひずみがたまるため、地震が発生しやすくなると考えられている。これまで、北海道、東北地方の沖合では広域にわたる周期的なスロースリップは確認されていなかった。
東北大の内田直希(うちだ なおき)助教らの共同研究グループは、今回、太平洋プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む広い領域を対象に、過去約30年間に起きた6千回以上の地震と地殻変動のデータを分析。スロースリップが起きた頻度を統計的に推定した。
その結果スロースリップは、地域によって異なるものの北海道、東北から関東地方の沖合で、1~6年の周期で起きていることが判明。さらにこの現象が活発化した時期にM5以上の地震も発生する傾向があることも明らかになった。東北地方太平洋沖地震が発生した時期にも三陸沖でこの現象は起きていた、という。研究グループは、スロースリップが起きている状況を監視することで、地震発生をある程度予測できる可能性がある、としている。
関連リンク
- 東北大学プレスリリース「北海道〜関東地方の沖合で周期的なスロースリップを発見 -大地震の発生予測に新たな手がかり-」