日本人は広場の孤独に耐えられるのだろうか。日本では個人主義の傾向が高い人は親しい友人が少なく、幸福感も低いことを、京都大学の内田由紀子こころの未来研究センター准教授と荻原祐二教育学科大学院生が日米の大学生への比較調査で確かめた。同じ関連は、競争的な制度を導入している企業に働く成人の間でも見られた。2014年3月5日付のスイスの科学誌「Frontiers in Psychology」に発表した。
京都大学の学生114人(男性62人、女性52人)と米ウイスコンシン大学の学生62人(男性29人、女性33人)を対象に質問票で、個人主義的傾向の有無、親しい友人の数、主観的な幸福感などを詳しく尋ねた。その結果、京大生は、個人主義的な傾向が強いと、親しい友人が少なく、幸福感も低かった。ウイスコンシン大学生は、親友の数が少ない場合に、幸福感は低かったが、個人主義的傾向と親友の数や幸福感と関連はなかった。
さらに、契約獲得の目標と実績が壁に毎月掲示されるなど、同僚同士の競争が激しい生命保険会社の女性外交員34人に対して同様の調査をしたところ、個人主義的な人ほど、友人が少なく、幸福感も低いという同じ関連が認められた。
内田由紀子さんは「個人主義と幸福感の関連を心理学的調査で示した第一歩の研究だが、今後も企業での追試で検証していく。日本も、グローバル化で個人主義の傾向が強まるのは避けられないにしても、無防備なままではなく、個人が孤立しないような社会的な制度や場を設計することが必要だろう。こうした研究を通して、対人関係の不振によって生じるひきこもりや無縁社会などの対策、予防に貢献していきたい」と話している。
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- 京都大学 プレスリリース