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原子力安全確保法案提出 原子力規制庁長官は民間から

2012.02.01

 政府は1月31日、内閣府の原子力安全委員会や経産省の原子力安全・保安院などを統合し、環境省に原子力規制庁や原子力安全調査委員会を設置することなどを盛り込んだ法案を閣議決定し、国会に提出した。原子力規制庁の長官について細野豪志環境相は「広く官民を問わず優れた人材を求めていくが、初代は官僚からの登用は考えていない。原子力規制、原発技術についての専門的知識を持って、科学的・客観的に判断でき、その上で事故に対する反省の思いを持っていることが長官の条件だ」と語った。

 31日に国会に提出されたのは、原子力組織制度改革法案と原子力安全調査委員会設置法案。原子力組織制度改革法案は、既存の原子力規制関連の法律13本を一括して改正する。今通常国会で成立させ、4月1日の原子力規制庁発足を目指す。

 法案では、原子力規制庁が科学的知見に基づいて公正に判断を行うことを確実にするため、3重の独立性を確保する。まず、経産省などの原子力推進側からは明確に分離し、緊急時対応以外の判断は環境相から原子力規制庁長官に法律上委任する。原子力安全調査委員会が第三者的見地から規制の独立性を監視し、必要な場合には原子力規制庁長官、環境相などに対して勧告を行う。

 また、事故は起こらないという前提に立った規制から、人と環境を確実に守れる規制へと転換し、シビアアクシデント(重大事故)への対策を法的に義務づける。最新の知見を既存施設にも反映するバックフィット制度を導入し、既に許可を得た施設にも最新基準への適合を義務づける。基準を満たすことのできない原発は、運転期間が20年でも廃炉になる。これらの規制強化の上、さらに原発の運転期間を原則40年にする。

 強固な防災体制を構築するため、原子力災害対策本部の体制・機能を拡充するとともに、その事務局となる原子力安全庁の体制を、緊急事態対策監(オンサイト)、原子力地域安全総括官(オフサイト)の設置などにより強化する。防災指針を法定化し、防災基本計画を策定するとともに、地域防災計画の策定をはじめとする自治体の防災体制整備を支援していく。

 原発事故による放射線障害に対する健康管理対策についても原子力規制庁が所掌し、放射線審議会を文科省から移管するとともに、放射線医学総合研究所の放射線障害防止に関する業務を文科省と共管とする。

 細野環境相は、一定以上の幹部職員については、利用と規制の分離を徹底する観点から出身府省との関係を絶つノーリターン・ルールを適用し、緊急時の体制強化のため、警察庁や防衛省などとは人事交流という形をとることを明らかにした。さらに、「今回の事故では原子力安全・保安院の技術に対する弱さを感じた。事業者よりも精通した人材が必要」として、原子炉に精通している人材を民間から求めるとともに、国際原子力機関(IAEA)をはじめとする国際機関と一層緊密に連携し、外国人の専門家を複数、アドバイザーに任命し助言を得ていく考えも示した。

 さらに、透明性を高めるため、情報公開ガイドラインを策定して開示請求を待たずに幅広く情報を公開し、広報とともに公聴を担当する課を設けて、国民の声を安全規制、防災対策に活かし、分かりやすい言葉で情報を発信していくことも明らかにした。

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