電力会社任せの検査など業務の問題点が指摘されていた独立行政法人「原子力安全基盤機構」について、総務省の「政策評価・独立行政法人評価委員会」(委員長・岡素之住友商事会長)は9日、「到底国民の期待に応えてきたとは言い難く、危機意識の欠如・マネジメントの不在など、組織風土に根差した根本的原因に大きな問題がある」と指摘する文書を枝野経済産業相に送った。
文書は、検査の中立性・公正性に疑念が生じている原因について、検査員などに原子力事業者出身者を多数採用していることを挙げ、「新規採用者や、原子力事業者以外からの中途採用者の育成に努める」ことや、「検査対象を出身元とかかわりのない施設に限る」ことなどを求めている。機構の技術系職員は、2003年に設立された時から50歳以上が3分の1を占め、発足時以降の新規採用者は1割にも満たない。
多額の研究予算のほとんどがデータ取得のため原子力事業者に支出されている不透明さも指摘し、研究実施計画の見直しと、委託先ごとに選定理由や委託業務の内容、契約金額などを詳細、迅速かつ分かりやすく開示することも求めた。
原子力安全基盤機構は2002年に発覚した東京電力のトラブル隠しを機に設立された。しかし、検査要領書を事実上、検査対象の事業者に作成させたり、検査作業の一部を電力会社やメーカー社員にやらせるなど、なれあい体質に起因するとみられる検査ミスが相次いだ。
総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会は、各府省の独立行政法人評価委員会などから提出された評価結果を基に二次評価する役割を負っている。経済産業省の評価委員会(室伏きみ子委員長)は、「常時、非常時ともに理事長のリーダーシップが発揮され、内部統制については既に一定のレベルに達している」「検査等業務のみならず、業務の質の向上に向けた継続的改善が図られている」などと評価していた。
こうした評価をまとめた経産省評価委員会に対しても、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会は「多発する検査ミスをはじめ、国民の信頼を失墜する重大な事象が発生しており、本法人の内部統制が一定レベルに達したとは、到底言い難い」と手厳しい意見書を送った。