細野豪史・原発事故担当相は6日記者会見を行い、原子炉に40年運転制限を設けるなど、原子力安全規制を見直すため、通常国会に原子力基本法、原子炉等規制法の改正案を提出する、と発表した。
原子力基本法については、原子力利用における安全の確保は、原子力安全に関する国際動向を踏まえ、「放射線による有害な影響から人と環境を守る」ために行う、と明文化する。
原子炉等規制法の見直しについては、シビアアクシデント(過酷事故)も考慮した安全規制へと転換したことを強調している。交流・直流電源の多重・多様性確保、設備内部への水の浸水防止、格納容器のベントシステムの改善など施設に対する規制基準を強化するとともに、これまで事業者の自主的取り組みと位置づけてきた過酷事故発生時の対策を法令による規制対象にする。事業者が第一義的に災害防止のために必要な措置を講ずる義務を有することを明確化し、運転開始以降だけでなく、設計・建設段階からの品質管理活動を行うことを法令によって義務づけるとしている。
また、炉ごとに施設の設計および運用における安全対策の総合的なリスク評価を義務づけ、結果を国に届け出るとともに、公表を義務づける。最新の技術的知見を技術基準に取り入れ、既に許可を得た施設に対しても新基準への適合を義務づける、いわゆるバックフィット制を導入するのも新しい点だ。
発電用原子炉については、運転開始後40年を超えては運転できないとしている。ただし、例外として原子炉設置者から延長の申請があった場合に、(1)施設自体の経年劣化の評価、(2)運転期間中に的確に原子炉施設の保全を遂行する技術的能力を審査し、問題がないものに限り一定期間の運転延長を承認する制度を導入する。これについては、40年とした根拠が明確に示されていない。最新の技術的知見を審査時の技術基準に取り入れるとしているが、地震が多い立地条件を前提に、どのような技術が、どのような原子炉に、どこまで安全向上につながるように取り入れていけるのかを判断するためには、規制側に膨大な知見と高度な判断力が必要になる。原子力安全庁がそこまでの能力を持つことができるかどうか、危ぶむ人も多いのではないだろうか。
これら規制強化に向けた見直しの一方、多数の原子力施設に導入が可能な設備・機器などに対する型式承認制度を新しく導入するとしている。これまでの安全規制では、安全性向上のための新しい技術が確立し、Aという原子炉で技術が実証されたとしても、Bという原子炉に適用するためには、原子炉Aで行った手続き(膨大な書類や手間が必要)を再度行わなければならなかった。電力会社がより重要な安全性向上への取り組みに振り向ける労力をそぐ要因になってきたことは否めない。今回の改正では、型式承認制度の導入によって、一度認証を受けた技術であればある程度簡便な手続きで改造を行えるようにしている。
細野担当相は「安全上の最新の知見を施設やその運用に反映するということを、法令によって透明化することで国民に見えるようにする」と見直しの意義を強調しているが、規制のあり方がこれで抜本的に改善されると期待する人はどれだけいるだろうか。