リチウムバッテリーに代わる小型燃料電池開発につながると期待される新素材を物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の研究チームが開発した。
トラベルサ・エンリコ・グループリーダーらが作製に成功したのは、イットリウム添加ジルコン酸バリウムの薄膜。イットリウム添加ジルコン酸バリウムは、小型固体酸化物燃料電池の素材として注目されていたが、多結晶材料として焼結性が悪く、電池の性能を左右するプロトン伝導率が低いという難点を抱えていた。
エンリコ・グループリーダーらは、パルスレーザー堆積法を用いることにより結晶粒界のない薄膜の作成に成功、さらに携帯電源用として不可欠な低温(350℃以下)でもこれまでに開発された固体酸化物燃料電池用電解質の中で最高の性能(プロトン伝導率)を持つことを確認した。
ノート型パソコン、携帯電話など携帯電源用として期待が大きい小型固体酸化物燃料電池は、環境に優しく、かつ効率的にエネルギーを生産できる利点を持つ。充放電サイクルを必要とせず、リチウムバッテリーよりもエネルギー密度が大きい。
リチウムバッテリーに代わる小型固体酸化物燃料電池の開発に新たな展望を切り拓く可能性を持つ研究成果だ、と物質・材料研究機構は言っている。